2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規構造体の創製による金属インプラント力学機能の生体模倣化
Project/Area Number |
11J00289
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
池尾 直子 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 電子ビーム積層造形法 / Ti基生体材料 / 複合材料 / 多孔質材料 |
Research Abstract |
報告者らは、種々のスケール、機能を有する材料の複合化による骨類似の低ヤング率、衝撃吸収性を併せ持つ構造体の創製を目指している。本年度では、電子ビーム積層造形法を駆使することで、粉末充填型ポーラス構造体という、非常に新規性の高い構造体の創製に成功した。さらに、本構造体の構造制御手法や微細組織について、既に、これまで全く知られていなかった以下のような知見を見出し、学術論文、学会発表として発表した。 (a)ポーラス構造体と本研究にて作製した構造体の中央断面のCT画像を比較すると、気孔部でコントラストが変化したことから、構造体中での粉末の残存が確認された。これは、三次元形状設計および電子ビーム照射条件を最適化させることで、「粉末」部と「壁」部からなるTi-6Al-4V製複合構造体の作製に本邦で初めて成功したことを示す。 (b)複合構造体の構成相はほぼα相であり、さらにラス状の均一な微細組織を呈するなど、これまでの研究にて作製された三次元多孔体と同様の結果を示した。従って、微細組織に対する粉末充填の影響は小さいと考えられる。 (c)粉末充填型ポーラス構造体中の「壁」部においては、造形方向に進展した柱状晶の形成が確認された。これは、「壁」部が、一方向性溶融凝固の繰り返しにより形成されるためだと考えられる。溶融凝固後の冷却過程では、形成されるβ粒から変態するときに、α相へと変態するが、この際バリアントの選択性は見られなかった。 (d)変態点直下で、種々の時間保持により、構造体中の「粉末」部間でのネックサイズ比が制御可能であった。ネックサイズ比の熱処理時間依存性から、ネック形成機構は、体積拡散によることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、同一組成を持ちながら異なる力学機能を有する材料の複合体、すなわち粉末充填型ポーラス構造体という新規構造体の開発を行い、低ヤング率、衝撃吸収性を兼ね備えた生体用インプラント材料の創製を目指す。研究実績の概要にもあるように、初年度に計画していた粉末充填型ポーラス構造体の作製に成功し、その微細組織の解明を行うとともに、熱処理の実施により、「粉末」部の構造制御に成功するとともに、そのメカニズムを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
粉末充填型ポーラス構造体の作製およびその微細組織や構造の制御因子の解明に成功したことから、今後は当初の計画通り力学的解析を実施し、力学機能の支配因子の解明を行う。併せて、力学機能最適化のための構造体の最適設計を行い、最終的には骨類似の力学機能が発揮可能なインプラントの創製を目指す。その具体的項目は以下の通りである。 (1)圧縮試験による応力-ひずみ曲線の取得、変形挙動直接観察およびヤング率、衝撃吸収特性の定量化 (2)パウダー部のネック構造を含む組織・力学特性の最適化 (3)力学試験、FEM法による応力解析結果をフィードバックしての、構造体の再設計と、作製・評価 (4)研究の総括
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