2011 Fiscal Year Annual Research Report
地域防災力の向上に向けた民族知の評価に関する研究―インド・アッサム州の事例から―
Project/Area Number |
11J00348
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
浅田 晴久 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | インド / アッサム州 / ブラマプトラ川 / 氾濫原 / 洪水 / 稲作 / 民族 |
Research Abstract |
1年目の2011年度はまず詳細な調査計画を立てると同時に、収集済みの一次データを分析し、ブラマプトラ川氾濫原の一村落における降雨変動と稲作収量との関係を明らかにした。その結果、調査村では降雨変動により引き起こされる水不足に対して、土地利用や品種など栽培技術によって適応し、その損害を軽減していることが分かった。 8月から12月まではインド、アッサム州に滞在し現地調査を行った。まずは州都グワハティにて稲作、水文に関する最新の統計データを収集した。民族分布についても明らかにする必要があるために、過去の国勢調査に関する資料類も入手した。 滞在中に広域調査を実施し、アッサム州内の多くの研究者の協力が得られたおかげで、期間中に32の村落を見て回ることができた。各調査村では農業に従事している男性村人に対して、自らアッサム語で聞き取り調査を行うとともに、農具や水田立地を観察した。 12月の帰国以降は、フィールドワークで入手した資料の整理と解析に努めた。国勢調査データと聞き取り調査の結果から、アッサム州の各民族の居住地はある程度の地域性が見られ、低地部の内部でも河川沿岸・丘陵の麓など生態条件に応じて住み分けが見られることが明らかになった。 広域調査で得られた稲作体系に関する一次データも解析し、民族毎・地域毎の差異が調べられた。稲作体系に関しては民族毎の差異は栽培技術の一部を除いてほとんど見られないことが明らかになった。しかし同じブラマプトラ川氾濫原でも地域差は大きく、特に外部技術に関しては州の東部より西部に位置する村落でより普及が進んでいる傾向が見られた。村人の証言により、近年は住民間の接触機会が増し、新たな技術の普及が進み易くなっていることが要因として考えられた。これらの知見は国内外の研究集会や学術大会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初はアッサム州の一部地域のみを対象として現地調査を行う予定であったが、現地協力者の尽力もあり、アッサム州のブラマプトラ川渓谷全体で広域調査を実施することができた。東京大学生産技術研究所の竹内渉准教授の協力のおかげで、予定になかったリモートセンシングのデータを使用できる目処が立った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はアッサム州の中で広域調査とインテンシブな世帯調査を同時に進めることで、稲作技術の地域差と民族差が生じる要因について知見を深めていく。さらに降雨データとリモートセンシングから得られた地表水データを重ねわせることで、洪水や干ばつなどの災害との関連性についても検討を開始する。
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Research Products
(7 results)