2011 Fiscal Year Annual Research Report
マインツ初期活版印刷所における写本装飾画家の活動と役割
Project/Area Number |
11J00392
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
池田 真弓 慶應義塾大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 西洋美術史 / 装飾写本 / 書誌学 / ドイツ / 西洋初期刊本 / 挿絵 / 書物史 / メディア |
Research Abstract |
本研究では、15世紀後半に発明された活版印刷術による最初期の印刷所である、マインツのペーター・シェーファーの印刷所を始めとするドイツの初期活版印刷所が出版した印刷本の装飾や挿絵を調査し、画家と印刷所との関わりを明らかにするとともに、印刷所の販売戦略、目指した本の形態や装飾・挿絵の利用法、画家の運用法などを解明する事を目的とする。本の歴史と共に歩んできた本装飾という文化が、機械的工程による本の大量生産・大量複製の時代到来にどう対応したのか、テキストに対して副次的な要素である装飾や挿絵を、出版業者はどう活用し、どのようにして自らの製品の付加価値向上に利用したのか、そして最終的には、写本時代の装飾手法が印刷本の普及につれてどのように変遷し、終焉へと向かったのかを見据えることを目指す。 平成23年度は、研究計画のうち既にある程度調査が進んでいるものを中心に再精査し、発表・出版する活動が中心となった。まず、2部の装飾入りグーテンベルク聖書における重要な発見に関する論文を執筆、投稿した(Papers of Bibliographical Society of America 2012年9月号掲載予定)。この2部の聖書に関しては更に分析を進め、そのうちの1部を保管しているスペイン・ヴァリャドリッドのカスティーヤ・イ・レオン州立図書館へ赴き、調査を行った。その成果は美術史学会東支部例会で口頭発表し、また、ドイツの学会誌Gutenberg-Jahrbuch 2012年号に論文が掲載予定である。 その他の発表や調査としては、15世紀にマインツで出版された本の印刷装飾イニシャルについて、ケンブリッジ大学主催の彩色版画・印刷関連の国際シンポジウムにおいて口頭発表を行った。また、ペーター・シェーファーの印刷所と関係を持っていた装飾画家の作品を中心とした写本・印刷本の調査のためにローマのヴァチカン図書館に赴き、計14冊の本を精査した。この調査の成果については、平成24年度に発表と論文投稿を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、これまで行ってきた研究を発展させまとめる作業を行ったが、目的が明確であったので、必要データの収集や整理を効率的・計画的に進めることができた。また、本年度受理された投稿論文はともに、国際的に評価の高い学会誌からの出版であり、本研究が国際的なレベルに達していることを確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる平成24年度は、研究対象とする印刷本の数を増やすと同時に、マインツ本との比較という意味で、異なる街の印刷本(アウクスブルクなど)の挿絵や装飾についての研究を積極的に行う予定である。それにより、最終年度は、より網羅的な視点から研究成果の総まとめをすることを目指す。
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Research Products
(4 results)