2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J00506
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
矢部 竜太 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 時系列 / 単位根 / Moderate deviation / 移動平均モデル |
Research Abstract |
一次の移動平均モデルにおいて帰無仮説を単位根とするスコア検定統計量がTanaka(1990)により提案された。本研究では対立仮説を単位根からの緩やかな乖離のある過程(Moderate deviation)のもとでの漸近分布を求め、乖離の程度により3つのクラスに分類できることを示した。この結果、単位根から最も遠いModerate deviationのクラスでは、反転可能過程と極限が一致しており、これらの過程は非常に似た漸近特性を持つことを証明した。この結果を"Limiting distribution of the score statistic under moderate deviation from a unit root in MA(1)"という論文にまとめ、学術雑誌「Journal of Time Series Analysis」より掲載許可を得た。 一次の移動平均モデル(MA(1))における単位根や近接単位根などの単位根の近傍のクラス(local-to-unity)においては係数のパラメータに関する最尤推定量などの推定量の漸近分布について多くの研究があったが未知であった。本研究ではlocal-to-unityのクラスに含まれるModerate deviationのクラスで、最尤推定量と同値な条件付き最小二乗推定量の漸近分布を与え、漸近分布は正規分布となり反転可能過程とよく似た漸近特性を持っていることを確認した。また、Giraitis and Phillips(2006)やPhillips and Magdalinos(2007)が一次の自己回帰モデル(AR(1))で行なっているように推定量の収束のオーダーが反転可能過程から反転不可能過程まで連続的に変化することを証明した。この結果を統計連合大会で口頭発表し、The 2nd Institute of Mathematical Statistics Asia Pacific Rim Meeting ims APRM 2012で口頭発表を行う許可を得た。また、以上の推定量の漸近特性の結果を研究論文として執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に得られた結果により、本計画の多くの部分を肯定的に解決することができた。また、本研究は基礎研究のみが中心であったがNg and Perron(2001)で提案されているモデルとの関連があり、応用問題への大きな貢献が期待できることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度はNg and Perron(2001)で提案されたモデルに対して本研究で得られた推定量の漸近特性の結果を応用する研究を行う予定である。彼らは誤差項にModerate deviationのある自己回帰移動平均モデルの単位根検定を提案しており、多くの実証研究に用いられている。しかし、情報量基準によるラグ選択など複雑な計算を要する上、彼らの考えている誤差項はModerate deviationの特殊ケースであるため制約的である。そのため、条件付き最小二乗推定量を用いた一般化最小二乗推定量を行いより広いモデルに応用でき、より簡便な検定手法を提案したいと考えている。
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