2011 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半期中国の郷村構造研究―広東・宗族・地域エリートを中心に―
Project/Area Number |
11J00664
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮内 肇 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 広東 / 郷村 / 地域エリート / 自治 / 宗族 |
Research Abstract |
本研究「20世紀前半期中国の郷村構造研究」の第1年目である今年度は、申請時の年次計画にしたがい、1、1910年代の広東郷村関する研究論文の発表、2、1920年代の広東郷村研究へ向けた史料調査および分析を行った。 1、1910年代の広東郷村に関する研究 本項研究は、『民生日報』・『香港華字日報』といった新聞史料・政権が発行していた『広東公報』を利用し、まず、李開洗の地方自治政策を明らかにした。李は県レベルに議事会を、県以下レベルに自治会を設置するように命じたが、その内容は、清朝末期に実施された地方自治政策を踏襲しており、それに加え、各自治組織の費用不足を鑑みて、地方公債の発行を認めるなどの対策を講じていた。次に、地域社会の指導者であった地域エリートの状況について考察を行った。特に1915年10月に実施された国民代表大会の選挙に如何なる人物が当選したのかを通じて、当選者の共通点を検討した結果、少なくない当選者が、清朝末期から地方自治に関心を持ち、郷里において地方自治を計画・実践してきた人物であったことを実証した。辛亥革命という王朝体制の崩壊、その後の不安定な政権あるいは軍閥による圧政という社会状況においても、同時期の広東地域社会の構造には大きな変化は生じていなかったのではないかと結論づけた。 2、1920年代の広東郷村に関する研究の準備 次年度以降の1920年代の広東郷村について考察を進めていくため、2011年9月に、広東省で史料調査を行った。 調査における最大の成果は、1910年代後半から始まった五四・新文化運動の影響を受けて、1920年代初頭に郷村の青年らによって刊行された雑誌「郷刊」閲覧できたことである。「郷刊」では、青年を中心にさまざまな郷村改革が主張されているが、こうした新たな思潮と新たな世代の出現が広東の郷村・地域社会、さらにそれらを構成していた宗族などの伝統性に如何なる変化をもたらしたかを念頭に置き、史料の分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1910年代の広東郷村社会における地域エリートの動態を中国大陸の雑誌で発表するなど、一定の成果は出せたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、6月から3ヶ月間、広東に滞在し、史料調査及び現地の研究者から指導を受ける。帰国後は収集した史料の整理、分析を行い、1920年代の広東における政治的状況を踏まえ、郷村における動態構造を考察、学会・研究会での報告、論文を執筆する。
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Research Products
(4 results)