2011 Fiscal Year Annual Research Report
高強度鋼と高強度コンクリートと用いた超高層建築物における大空間構成法とその設計法
Project/Area Number |
11J00669
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 和宏 京都大学, 防災研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高強度鋼 / H-SA700 / 組立柱 / SFRCC / 柱梁接合部 / スタッド |
Research Abstract |
本研究は、超高層建物に大空間を構成するという課題に対し、高強度鋼と高強度コンクリートという新材料を用いた部材や接合部の開発により、問題の解決を図る。本年度は、大きな弾性変形能力を有するH-SA700と称する高強度鋼を用いたを柱部材の開発と、柱梁接合部にSFRCCと称する高強度高じん性のコンクリート系材料を用いたスタッド接合を適用する仕組みの考案に取り組んだ。 高強度鋼H-SA700を用いた柱部材の開発では、H-SA700鋼板をボルト接合によって組立てて部材を形成することとし、高強度鋼溶接を用いない条件を課した。提案組立柱は2枚のプレート材とチャンネル材から成り、それらを高力ボルトで締めつけることで構成される。実験的検証では、H-SA700を用いた提案組立柱が曲げ圧縮を受ける場合の弾塑性挙動に着目し、次の2点を明らかにした。1)建物の層間変形角が1/100以下の領域を対象としている実設計では、提案組立柱は弾性部材として扱うことができる。2)同一の曲げ耐力を有する通常軟鋼SS400部材に比べて、H-SA700を用いた提案組立柱のエネルギー消費能力は約0.7倍である。 高強度コンクリート系材料SFRCCを用いた接合部の開発では、通常のスタッド接合で用いられるモルタルに対して圧縮強度で約3倍、引張強度で約10倍の性能を有するSFRCCの利点を生かし、密に配したスタッドを介して柱梁接合部の強度と剛性の向上を図る。実験的検証ではSFRCCに対するスタットの押し抜き実験を行い、その塑性変形挙動と荷重伝達機構を検討し、次の点を明らかにした。1)単調載荷における最大せん断耐力に対して、繰返し載荷ではその0.85倍の耐力が最大値となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年4月現在、本研究に直接関連する査読付論文2編、間接的に関連する査読付論文1編を発表している。また、現在投稿中の査読付論文も3編ありその内容には、超高層建物の下層階に吹抜け大空間を構成するという研究目標に対し、想定する3つの主要な研究課題のうちの1つ「長柱となる可能性の高い建物側柱の力学的特性の把握」を結実させる内容を含む。実験的検証に関しても、2011年度は高強度材料を用いた部材実験を2回実施している。また、2012年度の実験に向けて、3種類の実験に対しその計画や試験体の発注等を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、超高層建物の下層階に吹抜け大空間を構成するという目標に対し、建物を構成する各部材および接合部に関する基礎的な研究と、それらを踏まえて超高層建物全体の耐震性能を検討する総括的な研究の2つから成る。両者はともに実験的検証をその中核とするが、研究2年度目の2012年度は、部材および接合部に関する基礎的研究の結実をめざし、その実験的検証の残りすべてを遂行する。さらに、それら実験的検証から得られた知見を元に、吹抜け大空間をその下層階に配した超高層建物全体の耐震性の検討に向けた数値解析を実行する。そして、研究最終年度となる2013年度は、先の数値解析に基づいた超高層建物全体の地震時挙動と耐震性能に関する検証実験を実施し、研究全体の結実を図る。
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