2012 Fiscal Year Annual Research Report
高強度鋼と高強度コンクリートを用いた超高層建築物における大空間構成法とその設計法
Project/Area Number |
11J00669
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 和宏 京都大学, 防災研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 超高強度鋼 / H-SA700 / CFT構造 / 部材靱性 / SFRCC / スタッド / 柱梁接合部 |
Research Abstract |
本研究は、超高層建物の下層階に大空間を構成するという課題に対し、高強度鋼と高強度コンクリートという新材料を用いた部材や接合部の開発により、問題の解決を図る。本年度は、大きな弾性変形能力を有するH-SA700と称する高強度鋼を用いた柱部材の開発と、柱梁接合部にSFRCCと称する高強度高靭性のコンクリート系材料を用いたスタッド接合を適用する仕組みの考案に取り組んだ。 高強度鋼H-SA700を用いた柱部材の開発では、H-SA700を用いた鋼管内に高強度コンクリートを充填した「CFT柱」 を対象とし、部材性能の検証と設計法の導出を課題と設定した。研究では、高強度鋼H-SA700と高強度コンクリートを用いた柱部材が安定した曲げ圧縮挙動を示すことを実験的に検証し、既往のCFT構造設計法を援用する形で部材耐力および剛性が評価できることを明らかにした。 高強度コンクリート系材料SFRCCを用いた接合部の開発では、通常のモルタルに対して圧縮強度で約3倍、引張強度で約10倍の性能を有するSFRCCの利点を生かし、密に配したスタッドを介して柱梁接合部の強度と剛性の向上を図る。実験的検証では、柱梁接合部周辺のスラブをSFRCCとし、スタットを介して梁部材と接続した試験体を製作した。当該試験体の準静的載荷実験から、その塑性変形挙動と荷重伝達機構の検討を行い、柱梁接合部の剛性および耐力の向上の効果と、柱周辺のスラブひび割れの激減を観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年4月現在、本研究に直接関連する査読付論文4編、間接的に関連する査読付論文2編を発表している。その内容には、超高層建物の下層階に大空間を構成するという研究目標に対し、想定する3つの主要な研究課題のうちの1つ「長柱となる可能性の高い建物側柱の力学的特性の把握」に関する内容を含む。実験的検証に関しても、2012年度は高強度材料を用いた部材実験を実施しており、その成果を論文の形で発表すべく現在執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、超高層建物の下層階に大空間を構成するという目標に対し、建物を構成する各部材および接合部に関する基礎的な研究と、それらを踏まえて超高層建物全体の耐震性能を検討する総括的な研究の2つからなる。両者はともに実験的検証をその中核とするが、研究2年度目の2012年度は、部材および接合部に関する基礎的研究の結実を図った。研究は実験的検証から得られた知見を整理し、大空間をその下層階に配した超高層建物に一定の耐震性を付与しうる設計条件を導いた。研究最終年度となる2013年度は、先の実験的検証の成果を援用した数値解析に基づき、超高層建物全体の地震時挙動と耐震性能に関する検証実験を実施し、研究全体の結実を図る。
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