2011 Fiscal Year Annual Research Report
福祉の媒介空間としての農業の再定義と利用のプロセスに関する日欧比較社会学的分析
Project/Area Number |
11J00737
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
村松 研二郎 埼玉大学, 教養学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 福祉国家 / 農業 / 市民農園 / 高齢者の生きがい / 長期失業 / 社会的包摂 / 実践的社会学 / フランス:ベルギー |
Research Abstract |
本研究の日的は、現代仕会における農林業の再定義と利用プロセスを明らかにするため、特に、「福祉の媒介空間としての農業」というテーマに関して経験的・理論的研究を行い、新たな社会学的視座を示すことである。本年度の研究実施計画の目標は、以下の3点である。(1)これまで自分が行ってきた研究のデータ面、理論面、問題設定の点からの総合的かつ批判的な総括を行う。(2)そこから得られた展望に基づいた新たな現地調査計画を具体的に作成する。(3)新たな調査計画に基づいた予備調査を実施する。 (1)の研究の批判的総括については、全体として目標を達成できたと考える。具体的には、これまで個別に行ってきた事例研究について、歴史的・社会的・政治的背景を、福祉国家の再編過程と福祉と結びついた農業の利用、という2つの観点から明らかにした。理論面においては、状況に関する歴史的・規範的要因の分析との両立可能な新たな民族誌的手法として捉え直す作業を行った。事例に関するデータ面の再検討については、高齢者対策と農業振興対策が、地域政策の中で組み合わされ実施に移される流れを国・地方レベルの取組から捉えなおす作業を進めた。 (2)の現地調査計画の作成については、(1)の作業を進める中で得られた新たな知見により、研究方向に若干の修正が生じたため、計画を少し遅らせることとなった。新たな知見とは、19世紀の産業社会に特有の歴史的背景(ヨーロッパの労働者農園運動)をふまえることの重要性である。そのため、上記の点に関する歴史研究を研究計画に加えた。 (3)の予備調査に関しては、上記の理由で実施時期に遅れが生じたが、次年度実施予定の現地調査のための連絡を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体として順調に研究は進展している。研究計画において当初予定していなかった変更が生じたが、それは研究上得られた新たな知見により必要とされたものであり、今後の研究にとって有意義な変更であると考える。研究内容については、今までの研究の総括をし、今後の方向性を明確にできた。特に、日本とベルギーの事例比較から、社会的弱者の身体を介した社会空間構成のあり方を、社会政策思想史の重要性をふまえた上で、現代的「社会問題」の一貫として捉え直すことができた点が主な成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、フランス・ベルギーおよび日本(愛知県)において、農業を利用した社会事業の実施プロセスに関する、それぞれ約3ヶ月から半年間にわたる現地調査を行い、調査後、一次資料の整理・分析作業を行う。また、以下の2点において計画変更を行った。 ・19世紀末フランスにおける労働者農園運動の政治的・思想的背景に関する歴史研究を加えた。 ・今年度予定していた予備調査を次年度に繰り越して行うこととした。調査対象は、フランス・ストラスブール市における社会的包摂農園、市民農園、園芸福祉を行う団体、失業者雇用を行う近郊農家、および愛知県における生きがい型農業・市民農園の推進自治体およびNPO、園芸福祉を行う団体。
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Research Products
(2 results)