2012 Fiscal Year Annual Research Report
高温高圧下でのマントル鉱物、水素の熱・電気伝導率測定:惑星内部の輸送特性の解明
Project/Area Number |
11J00825
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
太田 健二 大阪大学, 極限量子科学研究センター, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 熱伝導率 / ペロフスカイト / ポストペロフスカイト / 下部マントル |
Research Abstract |
惑星は誕生してからどのような進化を経て、終わりを迎えるのか?地球に住む生命はいつ、どんなきっかけで誕生し、陸上へ上がり、今後どのような進化を遂げるのか?これらの謎を解くために我々が知るべき要素は多い。その中で、惑星内部物質の導電性、熱物性は惑星磁場の生成と経時変化や物質循環、地球の熱進化を探る上での最も基本的な情報である。しかし、地球深部物質の高温高圧下電気伝導度・熱伝導率測定は実験の困難さから下部マントルやコアに相当する温度圧力条件で行われた研究は皆無に近い状況であった。私はダイヤモンドアンビルセル高圧発生装置を用いた最下部マントルに相当する温度圧力条件での電気伝導度と熱伝導率の測定技術を世界で初めて確立した。その技術を用いた平成24年度の業績の一つを以下に記す。 「下部マントル構成鉱物MgSiO_3ペロフスカイト、ポストベロフスカイトの熱伝導率(Ohta et al.,2012,Earth and Planetary Science Letters)」 惑星の熱進化とダイナミクスを考える上での基礎的な物理量の一つ、それが惑星構成物質の熱伝導率である。地球下部マントルは地球の体積の7割以上を占めるため、そこでの熱輸送が地球の進化に多大な影響を与えていることは間違いない。私はこれまで測定が非常に困難だと考えられてきた25万気圧を超える高圧下(下部マントルよりも深い領域)での熱拡散率の測定手法を新たに確立した。この手法を用いて、下部マントル主要構成鉱物であるMgSiO_3ペロフスカイト、ポストペロフスカイト相について、下部マントル全域の圧力での熱伝導率測定に世界で初めて成功した。その実験結果から下部マントルの熱伝導率構造を決定した。下部マントルの熱伝導率は過去に低圧で行われた実験の結果から推定された値とほとんど変わらないことがわかった。また、ベロフスカイト相はマントル最深部において、ポストペロフスカイト相へと構造相転移することが知られている。この相転移に伴い熱伝導率はおよそ6割上昇することを高圧実験によって初めて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の研究実施計画にある下部マントル鉱物の熱伝導率測定の研究については、実験、学会発表、論文の出版を達成している。水素の電気伝導度測定についてはスプリング8において、3回の実験に挑んだものの流体金属水素の合成、電気伝導度測定にはまだ成功していない。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は流体金属水素の電気伝導度測定に集中したい。高圧装置内への水素の閉じ込め、圧力温度の発生はうまくいっているものの、高温高圧状態での水素の電気伝導度の測定は、測定時に電極が切れてしまうなどアクシデントによってまだ成功していないが、今年度の大半の時間を水素の研究に費やし、実験回数を増やすことで水素の高温高圧での物性を明らかにしたい。
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Research Products
(9 results)