2011 Fiscal Year Annual Research Report
摩擦型境界条件下のNavier-Stokes方程式の有限要素近似
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11J00848
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柏原 崇人 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Navier-Stokes方程式 / 有限要素法 / 滑り境界条件 / 漏れ境界条件 / 摩擦型境界条件 / 変分不等式 / Ladyzhenskaya型の強解 / L1ノルムに対する数値積分 |
Research Abstract |
交付申請書に記載した研究実施計画では、(1)2次元定常Stokes方程式の摩擦型滑り・漏れ境界条件問題に対する有限要素解析を行う、(2)非定常Navier-Stokes方程式の摩擦型滑り・漏れ境界条件問題に対する厳密解の存在と一意性の研究を進める、が本年度の主要な目標であった。さらに、(1)に関連して、(3)L1ノルムに対する数値積分公式の近似精度、を研究した。(1)-(3)全てで満足する結果が得られ、現在国際誌に論文を投稿中である。 以下に各研究成果の意義を説明する。(1)では、交付申請書で研究の目的に記した通り、誤差評価と数値計算の両方に適した有限要素近似を提案することに成功した。摩擦型滑り境界条件問題の有限要素近似に関してはいくつか先行研究があるが、誤差評価と数値計算のバランスを保つ点に本研究の意義がある。一方で摩擦型漏れ境界条件問題に対する有限要素解析を行ったのは本研究が初であり、流体に対する有限要素法の理論への貢献が見込まれている。 次に、(2)ではLadyzhenskaya型の強解の(局所)存在と一意性を証明した。非定常問題に対する結果は先行研究では不十分(外力が0の場合しか扱っていない、3次元の場合が考慮されていない等)であったが、本研究で厳密解の存在と一意性が確立された。また、解の存在証明において、非線形境界条件に対する初期値の適合性がどのように利用されるかを示した点にも本研究の意義がある。 最後に、(3)ではL1ノルムに対する数値積分公式を研究した。このテーマは(1)にも現れるが、(3)でより個別に詳しく調査した。L1ノルムは絶対値を含む関数、つまり滑らかでない関数の積分のため、既存の数値積分公式の誤差評価はそのまま当てはまらない。この点を踏まえ、本研究で数学的に正しい誤差評価を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記したとおり、摩擦型境界条件問題に関する本年度の2つの主目標を達成できた。加えて、L1ノルムの数値積分に関する研究成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおり、摩擦型境界条件問題に対する有限要素近似をより一般的な状況のもとで考える。具体的には、 (i)3次元問題 (ii)多角形以外の滑らかな領域の場合 (iii)非定常非線形Navier-Stokes方程式の場合 の場合に、本年度得られた成果を拡張していく。
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