2012 Fiscal Year Annual Research Report
摩擦型境界条件下でのNavier-Stokes方程式の有限要素近似
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11J00848
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柏原 崇人 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Navier-Stokes方程式 / 有限要素法 / 滑り境界条件 / 濡れ境界条件 / 摩擦型境界条件 / 変分不等式 |
Research Abstract |
本年度は、まず3次元のストークス方程式に対して摩擦型滑り・漏れ境界条件問題の数値解析および数値計算を行い、2次元の場合と同様な数値計算結果を得ることができた。特に滑り境界条件の場合、3次元問題では2つの接方向を扱わなければならないところに難点があるが、そのような場合にも数値計算が問題なくできることを示した点は意義がある。理論解析では、今までh(離散化パラメータ)の1/4乗しか得られていなかった誤差評価をhの1/2乗に改善することができた。 次に、摩擦型境界値問題に対する本研究の手法は非線形項に対する数値積分近似を用いる点が特徴であるが、この近似の導入により、離散化前の偏微分方程式問題のレベルでは成り立ついくつかの性質が離散化後の近似問題のレベルでも保たれることわかった。この保存性は既存のほかの手法では見過ごされてきたが、その重要性を指摘した点に本研究の意義がある。 さらに、実際にコンピュータで数値解を計算するためのアルゴリズムの改善も行った。今までは用いていたUzawa法は単純ではあるものの、数値解が得られるまでの反復回数が多くなってしまうという欠点があった。そこでUzawa法を修正・加速する新しい数値計算法を提案し、反復回数を3分の1程度に圧縮することに成功した。上に述べた保存性を本質的に用いてアルゴリズムが収束することを示した。 最後に、熱方程式に摩擦型境界条件を課した問題を考え、誤差評価および数値計算を行い、「摩擦型境界条件問題はディリクレ条件とノイマン条件の中間物である」という直観に合致する数値計算結果を得ることができた。先行研究ではあまり考えられてこなかった、時間発展する摩擦型境界値問題に対する数値解析の第一歩となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3次元問題に対する誤差評価を導き、数値計算を成功させた。加えて、数値解を計算するためのUzawa法の欠点、すなわち収束の遅さを改善することができた。さらに、時間発展する摩擦型境界値問題の数値解析に第一歩を踏み出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的および計画の中で未解決で残っている主な部分は、円板のように滑らかな境界を持つ領域で滑り境界条件を扱うこと、そして時間非定常のナビエ・ストークス方程式に対する摩擦型境界値問題の数値計算を行うことである。前者では法線方向のみにディリクレ条件を課すところに困難があるが、ペナルティー法で拘束条件を扱うアイデアを試みる。後者は本研究の集大成にあたる課題であり、これまでに得られた知識を総動員して挑戦したい。
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