2011 Fiscal Year Annual Research Report
近代ドイツ型立憲君主制の再検討―ウィーン会議における共和主義的言説の分析―
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11J00857
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阪本 尚文 京都大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ウィーン会議 / シエース |
Research Abstract |
本年度はまず、ウィーン会議に参加したドイツ諸邦の外交官たちの書簡のなかに、名誉革命以後英国で展開された共和主義的言説と類似の言説の存在を確認した修士論文の加筆修正を行った。当該論文は、12年度に刊行される叢書の1章として公表される予定である。また、11年夏季休業中にヨーロッパで史料収集を行う予定であったが、仙台市の実家が東日本大震災で被災しその対応に忙殺されたため海外での史料収集を断念し専修大学及び東北大学で収集を行い、ドイツ型立憲君主制とは対照的なフランスにおける立憲君主制の諸相を、とりわけ両院制の構成に着目して分析した。この成果として「シエースは両院制論者か?-フランス革命初期の立法府分割論の軌跡」を執筆した。当該論文は、12年4月に『法律時報』(日本評論社)に投稿される。そこではわが国の公法学・政治学でテクスト上の根拠が不明のまま一院制論者として扱われているフランス革命の理論的指導者が、実際には今日的な一院制論にも両院制論にも還元されない立法府分割論の支持者であり、このいささか奇妙な発想の背後に多様な中間集団を代表させるドイツ型立憲君主制とは正反対の、中間集団の一切を排除するフランス革命の政治文化があることを指摘した。さらに、革命フランスの共和主義思想がドイツの立憲制に与えた影響を探るため、京都大学人文科学研究所の共同研究「啓蒙とフランス革命I・1793年の研究」に参加して恐怖政治期のテキストを講読した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災で仙台市の実家が被災したため、2011年度のはじめはその対応に忙殺され研究の初動が遅れてしまった(ドイツ現代史研究会での学会報告を予定していたが、震災のため学会自体が中止となってしまった)。
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Strategy for Future Research Activity |
フランス革命期の代表制論のなかで中間集団がいかに位置づけられたかを、第二院の構成をめぐる議論に着目しつつ議会議事録を中心に調べるなかで、ドイツ型の立憲君主制の代表制論におけるそれと対照させるのが有効な論点を2、3見出した。これを、今年度の夏休みを目途に『法学論叢』(京都大学法学会)及び『法律時報』(日本評論社)に投稿することを予定している。
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