Research Abstract |
平成23年度は,身体的虚弱の把握に有用な身体パフォーマンス項目を検討するため,下記に示す2つの検討をおこなった. 1.65歳以上の高齢女性322名を対象に,上肢機能制限および機能的依存を外的基準とし,上肢5項目(握力,ファンクショナルリーチ,バックスクラッチ,ペグ移動,豆運び)と通常歩行速度の識別力(area under the receiver operating characteristic curve: AUC)を比較した.その結果,単独項目としては握力と通常歩行速度がほとんど同等に上肢機能制限と機能的依存を識別できた.上肢機能項目をさらに組み合わせても,上肢機能制限に対するAUCは通常歩行速度のAUCとほとんど同等(AUCの差:3-5%)であった. 2.65歳以上の高齢女性701名を対象に,高次生活機能,主観的な動きやすさ,移動能力制限,機能的依存,転倒を外的基準とし,(1)上肢合成得点(握力+ファンクショナルリーチ+ペグ移動),(2)下肢合成得点(タンデムバランス+5回椅子立ち上がり+ステップテスト+タイムドアップ&ゴー),(3)overall得点(上肢3項目+下肢4項目),(4)通常歩行速度のAUCを比較した.その結果,すべての外的基準に対して,7項目を合成したoverall得点と通常歩行速度のAUCはほとんど同等であった(3-5%). 以上より,身体的虚弱の把握には通常歩行速度が最も有用な指標となる可能性が示唆された.通常歩行速度は上肢機能項目の組み合わせと同等に上肢機能制限をも識別可能であったことから,下肢機能のみを反映する項目ではなく,全身の機能的状態をあらわすことが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
投稿論文の審査の過程で,査読結果に基づいた計画変更を余儀なくされたが,筆頭著者として3編の学術論文が受理されたことから,全体的には期待以上の進展があったと考えている.次年度は,残りの研究計画の遂行と論文執筆に注力したい.
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Strategy for Future Research Activity |
当初は,上肢および下肢機能の指標を作成し,その影響度分析をおこなう予定であったが,平成23年度の研究結果より,通常歩行速度が最も重要な項目であることが示唆された.したがって24年度は,通常歩行速度がどの程度遅延化すると高齢者の生活上の不具合が生じてくるかを検討し,通常歩行速度の基準値を示す.その上で運動介入研究をおこない,通常歩行速度の改善と身体的虚弱状態の改善との関連を検討する予定である.
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