2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J01032
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
竹井 英文 国立歴史民俗博物館, 研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 織豊政権 / 天下統一 / 織豊期 / 戦国期 / 政治史 / 豊臣政権 / 城郭 / 惣無事 |
Research Abstract |
本年度の研究は、これまで実施してきた織豊政権による東国統一過程に関する研究、および戦国・織豊期東国城郭の基礎的研究を継続すると同時に、前年度から積極的に取り組んでいる天正18年(1590)の小田原合戦以後の政治史・城郭史の研究を進めてきた。 本年度活字化された成果は、以下の通りである。(1)これまでの東国統一過程に関する研究成果をまとめ、『織豊政権と東国社会-「惣無事令」論を越えて-』(吉川弘文館、2012年4月)として刊行した。著書としてまとめるにあたり、これまで発表してきた雑誌論文の増補訂正を行うと同時に、序章「織豊政権の全国統一過程に関する研究史整理と課題一東国を中心に一」、補論「天正末期下野国の政治情勢と豊臣政権一年未詳七月晦日付け徳川家康書状をめぐって-」の2本を新稿として加えた。織豊政権による全国統一過程のうち、東国統一過程の全体像を一程度描くことに成功したと考えている。(2)「その後の「杉山城問題」-諸説に接して一」(『千葉史学』第60号、2012年5月)では、ここ10年ほど積み重ねられた議論の論点を改めて整理しつつ、自説である戦国前期山内上杉氏築城説を改めて主張した、(3)「豊臣政権と武蔵府中-府中御殿の再検討一」(『府中市郷土の森博物館紀要』第26号、2013年3月)では、徳川家の府中御殿の起源が秀吉の「御座所」にあることを指摘し、小田原合戦後の政治史の一側面を解明した。 論文以外では、木村茂光監修・歴史科学協議会編『戦後歴史学用語辞典』(東京堂出版、2012年7月)のなかで、本研究と深く関わる用語である「惣無事」「国分」の執筆を担当した。学会発表としては、「館山市立博物館所蔵「里見吉政戦功覚書」の紹介と検討」(千葉歴史学会中世史部会、2013年2月23日)で、を行った。講演活動としては、(1)調布市郷土博物館からの依頼を受けて「戦国前期の東国と史跡深大寺城跡」(調布市文化財講演会、2012年10月)(2)調布市西部公民館の依頼を受けて、「城郭研究の可能性一深大寺城を中心に一」を2012年3月27日に発表し、研究成果を市民に還元した。その他、これらに関連して、群馬・静岡など各地で関連史料調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、著書『織豊政権と東国社会-「惣無事令」論を越えて-』を刊行したことにより、織豊政権による天下統一過程のうち、東国統一過程に関する自身の見解をまとめることができたことによる。また、著書刊行後の課題である小田原合戦後の政治過程の追究についても、昨年度に引き続き『府中市郷土の森博物館紀要』掲載論文などによって順調に進んでおり、関連史料の調査も継続的に行えたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果に基づき、今後も引き続き、東国を中心とした研究を進めていきたい。著書刊行により、当該期の東国政治史像を描き、自身の見解を提示することに成功したが、そこでは検討できなかった時期・地域の検討を引き続き進め、著書の欠を補いつつ、当該期政治史像をより豊かにしていきたい。また、昨年度以来の課題である、小田原合戦以後の政治過程の解明についても、引き続き重点的に取り組んでいきたい。とくに、小田原合戦後の徳川家康の関東入国の問題を重点的に取り上げ、統一後の支配の実態を解明することを通じて、天下統一過程の歴史的意義を考えていきたい。
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Research Products
(6 results)