2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J01154
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
常木 雅之 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 口腔扁平上皮癌 / ポドプラニン / 細胞外基質 / 細胞接着 / 細胞増殖 / 分子間相互作用 / 歯原性腫瘍 / 唾液腺腫瘍 |
Research Abstract |
本研究は口腔腫瘍細胞の動態にかかわるポドプラニンの分子機構を解明することを目的とし、ポドプラニンが細胞外基質など細胞外分子と関連して腫瘍細胞の増殖・浸潤性を規定しているという仮説のもとに以下の実験をおこなった。 (1)ポドプラニンの各種口腔腫瘍・腫瘍様病変における発現解析:ポドプラニンは、悪性腫瘍(扁平上皮癌、腺様嚢胞癌)のみならず、良性腫瘍(各種の歯原性腫瘍、多形性腺腫、導管内乳頭腫)、さらには嚢胞(歯原性嚢胞、鼻口蓋管嚢胞)においても発現が確認された。一様に、細胞外環境と境界する実質細胞に特徴的な発現が観察され、細胞外基質など間質空間分子との関連性が強く示唆された。 (2)ポドプラニンの扁平上皮癌細胞における機能解析:ヒト舌扁平上皮癌由来ZK-1細胞において、効率的かつ特異的なポドプラニン発現抑制系を確立した。組織上では細胞増殖マーカと共発現が確認されたため、増殖試験で検討したところ、抑制細胞では細胞増殖能が有意に低下した。しかし、フローサイトメトリー法で解析すると、アポトーシスによる細胞死は誘導されておらず、増殖抑制は副次的なイベントであったことが確認された。そこで細胞接着性に注目してポドプラニン抑制細胞を観察すると、細胞・基質間接着を媒介とした細胞接着能が有意に抑制されており、接着様式はヒアルロン酸を含む細胞外基質とポドプラニン細胞外ドメインを介することが判明した。しかも、ポドプラニン発現はヒアルロン酸受容体であるCD44と相関しており、ポドプラニンはCD44と関連し、間質空間を認識することで細胞接着機能を果たしていることが明らかとなった。ポドプラニンが胞巣を形成する癌細胞間に強発現するという組織学的発現様式を矛盾なく説明することができたので、つぎにCD44-ヒアルロン酸のほかにポドプラニンの機能発揮に関連する分子を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に基づいたデータ解析のみならず、解析過程で得られた新規所見から、新たな研究展開が可能となった。研究進捗に関しても、当初の計画よりも進行しており、研究課題に関する論文発表、学会発表も滞りなく進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
ポドプラニンと相互作用するタンパク分子に関しては候補因子の同定が進んでいるため、分子間相互作用の再現性および細胞内局在について解析を進める。本年度の成果により、ポドプラニンは細胞外環境を認識している可能性が示唆されたため、細胞・細胞外環境のコミュニケーションに関する研究を、neuro-vascular nicheの観点から、米国エール大学病理学教室において研究を開始する予定である。 本課題によるすべての研究成果を来年度中に論文発表を完了する予定である。
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