2013 Fiscal Year Annual Research Report
現代台湾における歴史叙述:中華民国と泰緬孤軍とを架橋する中華救助総会に即して
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11J01368
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
若松 大祐 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 人権 / 送炭到泰北 / 中泰支援難民服務団 / 泰北難民村工作団 / 泰北農技援助団 / 台北海外和平服務団 / 泰緬地区華裔難民権益促進会 / 孤軍後裔 |
Research Abstract |
現代台湾(1945-現在)において、中華救助総会(救総)はとりわけ泰緬地区の同胞を救援するに際し、いかにして「我々」(国民国家的な主体)の歴史を叙述してきたのか。本研究の目的はこの問いを解明し、現代台湾という時空をよりよく理解することに在る。 三年目の今年度は、現代台湾史において出現した官製歴史叙述や泰緬孤軍像を背景として踏まえた上で、特に救総が展開する歴史叙述について考察を試み、次の2つの知見を得た。すなわち、第1に、現代台湾において泰緬孤軍というふうに名づけられた泰緬地区在住の人々を、中華民国政府の主導する人権概念に基づき、救助対象とみなしていたこと。第2に、世代交代により、孤軍後商(孤軍の末窩)と呼ばれる人びとが出現し、救総の他にも中華民国と孤軍を架橋する媒体が出現したこと、の2点である。孤軍後裔は、救総とのつながりを相対的に希薄化しつつも、台湾との多様なつながりを持ち、タイや台湾という土地に根付こうとしており、タイにおいては朝野挙げての観光立国化の機運の中で、ゴールデン・トライアングルに関するテーマパークを立ち上げたり、台湾においては朝野挙げての多元化の機運の中で、雲南文化公園を設置している。特に第2点について、更なる考察を踏まえ、投稿を前提にした論文を執筆中である。 受入機関の京都大学で東南アジア地域研究に関する研究会や講義へ参加し、またタイへ1回、台湾へ1回短期出張して、今年度の研究を遂行ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の「研究実績の概要」で既述したように、本研究は三分できる。一年目は中華民国の、二年目は泰緬孤軍の、三年目は救総の歴史叙述を考察する。三年目の計画をほぼ予定通り実施した。ただし時間切れになった憾みは残っている。現在その成果を論文にまとめており、近いうちに学術雑誌へ投稿する予定である。そこで、本研究の達成度を「おおむね順調に進展している」というふうに自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」で既述した、政府主導の人権概念については、今後さらなる考察が必要であり、泰緬地区のみならず、同時代的背景を考慮すると少なくともインドシナ半島規模の視野が不可欠となる。中華民国あるいは台湾が、中華人民共和国と区別し自らの存在を主張するため、とりわけ対外的に掲げたのは民主と人権であった。こう考えると、かかる人権の内容を歴史的に考察することは、現代台湾史像を問い直すきっかけになるだろう。(ちなみに民主の内容については、博士論文などですでに考察した。)
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Research Products
(6 results)