2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J01425
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
関根 良博 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 無機化学 / 金属錯体 / 混合原子価 / 外場応答 / 磁性 / 光物性 / 電子移動 / 水素結合 |
Research Abstract |
近年、熱や光、プロトンなどの様々な外部刺激に応答する多重外場応答性分子に関してさかんに研究がなされている。本研究ではそれら外場応答性分子を適切な架橋分子で連結することにより、孤立分子系では見られない集積構造に基づく新たな物性の発現を目的としている。今回、スピン平衡や電子移動が絡んだ機能性化合物であるシアン化物イオン架橋Co_2Fe_2四核錯体分子を対象物質とし、様々な反応条件を検討した結果、以下に示す研究成果を得た。集積方法として、四核錯体と架橋分子との水素結合を利用することで集積型分子を得ることに成功した。導入する架橋分子を選択することにより、四核錯体分子の集積様式は任意に変化し、一次元鎖構造体及び二次元ハニカム構造体を得ることに成功した。 得られた集積型分子は、架橋分子のプロトンドナー部位と四核錯体のプロトンアクセプター部位との間で水素結合を形成することで組みあがる。これらはいずれも温度変化により電子状態が変化し、磁気測定の結果から磁性の二安定性を示すことが明らかとなった。熱による電子状態変化は、温度可変単結晶X線構造解析及び赤外吸収スペクトル測定からFe(IID-CN-Co(II)⇔Fe(II)-CN-Co(III)で表される金属イオン間の電子移動に由来する変化であることが示唆される。また、極低温における光照射実験の結果、鉄及びコバルトイオン間の原子価間電荷移動遷移に対応する赤色光を照射することで、光誘起準安定状態が励起された。すなわち、外部刺激として熱のみならず、光照射することでも電子状態変換が可能であることが分かった。これら集積型分子は、構築素子の外場応答性を阻害することなく架橋分子により連結可能であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で初年度に計画した、プロトンドナー型架橋分子により四核錯体を連結した多重外場応答性一次元鎖錯体の合成を達成することができ、研究対象とする集積型分子の合理的合成法の確立に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
新規に合成した集積型化合物を対象として、電場印加によるプロトン移動および電子状態変化について検討する。
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