2011 Fiscal Year Annual Research Report
新左翼運動から見る戦後日本―人々の出会いの経験をめぐって
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11J01505
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鎌倉 祥太郎 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 思想史 / 新左翼運動 / 津村喬 / 歴史認識 / 歴史学 |
Research Abstract |
私は特別研究員の採用一年目にあたる2011年度を、主に津村喬研究に焦点を当て研究をおこなった。津村喬は主に1970年代にジャーナリズムの場で活躍した人物。本研究のテーマとの関連でいえば、新左翼運動に民族問題や差別問題、また日常生活を取り巻く権力関係の論説、テクストを多く残し、近年の研究でも徐々に注目が高まっている人物である。2011年度はその成果として「「読みの連鎖」と歴史認識--津村喬における猪俣津南雄/高野実への参照から」を『日本学報』(2012年度刊行)に執筆した。本論文は津村喬を、その実父でありまた総評事務局長を務めたこともある組合運動家・高野実と、高野の師にあたり戦前の資本主義論争にも加わった経済学者・猪俣津南雄との関係から、その参照の過程においてなされる「読み」が歴史へと接近する一つの方法であることを示した。これまでの社会科学の学問的な方法の多くが、対象を枠組みの中で規定し、そこから普遍性や理論を取り出すものであったが、そのような方法とは異なり、「読む」という行為の過程でテクストや他者の経験によってそれらが持っている歴史の磁場へと巻き込まれることを本研究は示した。それは、社会科学的な歴史の把握の仕方が見落としてきた、ある歴史認識の在り方の一つを示すものであったといえる。この点は、本研究が明らかにしたオリジナルな点であると考える。また、本年度は積極的に学外の研究会にも参加した。台湾・台北で行われた国際日本学研究会の2011年度大会では、オブザーバーとして参加し、東アジアの日本研究を幅広く吸収した。またこの大会では一部司会としても参加した。また、京都で行われた国際研究ワークショップ「空間とガバナンス」では、コメンテーターの一人としても参加した。このほかにも、関西を中心として多くの研究会に参加することで、思想史という枠を超え、横断的な知を参照しながら、多くの研究者との交流も深めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2011年度の研究において、歴史学的な時間把握の問題を本研究は突き、思想史的な観点から新たな歴史認識に達しうるような方法を開くことができた。この点は本研究のオリジナルな点であり、この点を明らかにしたことは本研究の進展を示すものであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は新左翼運動あるいはその前史的な戦後日本の社会運動を具体的に参照しながら、東アジアをめぐる歴史認識の問題を明らかにしていく。また、社会思想史学会あるいは日本思想史学会などでの大会発表を通じて、研究の成果を示すとともに、更なる発展を目指す。今年度の成果は、これら学会の学会誌に投稿する予定である。
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Research Products
(2 results)