2012 Fiscal Year Annual Research Report
新左翼運動から見る戦後日本-人々の出会いの経験をめぐって
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11J01505
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鎌倉 祥太郎 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 社会運動 / 新左翼運動 / 戦後日本 / ジャーナリズム |
Research Abstract |
2012年度は日本敗戦直後の労働組合運動を中心に研究・調査を行った。これは、本研究の主テーマたる新左翼運動の前史にあたる社会運動であり、なおかつ戦後日本の初発の段階にあってそれまでの統制・弾圧された社会運動が、抑圧されていたエネルギーを爆発させていく時期でもある。本研究では特に、新左翼運動期にジャーナリズムの場で特筆すべき活躍をした津村喬の実父・高野実と、彼が属していた戦後総同盟を研究対象とした。焦点をこれらに絞った理由として、全国的な組合組織となる総評の前段階における占領期組合運動の研究史的空白を埋めること、また敗戦直後の組合運動とその指導原理を見ることによって、戦後批判を行った新左翼運動との対比を明らかにすることなどが挙げられる。加えて、津村喬が高野実を社会運動とそのスタイルにおいて、いかに参照したのかという思想史的研究も行った。これは、単なる親子関係を超えて、テクストやその対象の人物の経験を読むという作業を経て、ジャーナリズムという異なるフィールドに引き付けていく過程について考察を行った。2012年度は、この点についての研究を行い、戦後総同盟の活動と組織形態を経済復興運動を足掛かりとして実証的に明らかにし、また高野が組織論においてどのような展望を持ち、組合運動に関わっていったのかという思想史的意味を明らかにした。また主テーマの新左翼運動についても引き続き研究を行い、華青闘告発にみられる運動内の民族差別とその差別意識について、華青闘告発のみでなく、広汎な運動の中で同時的に様々な文脈から個別的運動に即して立ち上がってきたテーマであり、その取り組み方の多様さとともに、それらの運動が提起した共通の課題についても分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度は占領期労働組合運動について研究を行い、複数の学会発表も行った。その意義と到達点については順調な進展といえるものの、論文化できなかった点が2012年度の反省といえる。このため、(2)おおむね順調に進展している、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は本研究課題の最終年度に当たり、これまでの研究の成果をまとめていくことが重要だと思われる。新左翼運動を特殊な一時期の運動と規定したり、あるいはこれまでのような通史的な叙述によって満足するのではなく、その多様性の解明と戦後日本という中に位置づける作業とが同時に必要になってくる。そのために、2013年度は戦後社会運動の視座と、新左翼運動の視座、特に戦後批判に顕著にあらわれる鮮やかなコントラストの意味を思想史的に考察・研究を行っていく。また、国民的運動といわれた戦後の諸々の社会運動と民族問題が顕現し、そのことへの思想的問いが提起されていく両者の問題の差異を考察することも求められている。
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