2011 Fiscal Year Annual Research Report
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11J01535
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石川 哲章 九州大学, 生体防御医学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 致死性敗血症 / Mincle / マラセチア |
Research Abstract |
当研究室は致死性敗血症を引き起こす病原性真菌マラセチアを、C型レクチン受容体Mincleが認識することを明らかにしたが、その死亡原因となる分子機構は未だに不明である。一方、申請者はMincleが結核菌の構成成分の一つである糖脂質TDMを認識し、強力な全身性炎症を引き起こすことを見出し、さらにマラセチアが生育に脂質を要求することに注目した。これらの知見から、Mincleによって認識されるマラセチア由来の糖脂質が同定できれば、この糖脂質がTDMと同様に、Mincleを介して過剰炎症反応を引き起こし、その結果、致死性敗血症を引き起こしている直接のエフェクターである可能性が高いと考えた。そこで、病原性真菌マラセチアが持つMincleリガンドの同定を行うことを目的とした。 1、マラセチア真菌を培養し、親脂性溶媒、両親媒性溶媒、親水性溶媒で処理し、認識分子の単離を行い、Mincleレポーター細胞を用いてリガンドの追跡を行った。その結果、リガンド活性が親脂性溶媒に移行することが判明した。 2、上記の粗精製抽出物をさらに精製するため、TLCやHPTLCを用いてリガンド抽出方法の条件検討を行った。また、粗精製抽出物を展開したTLCにオルシノール染色を用いて、糖脂質であることを確認し、この新規糖脂質がTDMとは異なる分子であることを確認した。 3、マラセチア真菌からこの新規糖脂質を大量精製し、九州大学大学院薬学研究院医薬資源探索学との共同研究により、マススペクトル解析やNMRによって構造決定を行い、2つの全く異なる構造を持つ新規Mincleリガンドの同定に成功した。 以上の研究から、致死性敗血症原因候補分子の同定だけでなく、Mincleの認識構造解明が飛躍的に進み、免疫応答を引き起こす新たなリガンド探索が容易に行えるようになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、1つの新規Mincleリガンドの探索が目標であったが、2つの新規リガンドを同定し、受容体Mincleの認識構造解明に多大な影響を与えている。また、既に、新規リガンドのMincleの寄与をin vitroにおいて検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
構造の決定したMincleリガンドの生体での活性評価を行い、Mincleの寄与を検討するため、WT、Mincle KOマウスを用いて以下の実験を行う。 精製したMincle認識分子を用いてマウス骨髄由来マクロファージを刺激し、TNFやMIPといった炎症性サイトカイン、ケモカインの産生値を測定し、in vitroにおけるMincleの寄与を検討する。さらに、マウスにMincle認識分子を投与し、血清中の炎症性サイトカインの産生量の測定、体重減少、生存率等の検討を行い、敗血症などの症状が再現できるか、Mincleの寄与はどうかを検討する。また、この症状が抗Mincle抗体やC型レクチンであるMincleが認識に必要な糖を投与することで緩和できるか否かを評価する。
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Research Products
(2 results)