2011 Fiscal Year Annual Research Report
グラフェンナノフレークの開殻性と非線形光学特性についての理論研究
Project/Area Number |
11J01632
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
米田 京平 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | グラフェンナノフレーク / 開殻 / ラジカル / 非線形光学 / 第二超分極率 |
Research Abstract |
近年、単層グラファイトであるグラフェンが将来のエレクトロニクス、スピントロニクス、フォトニクスにおける基礎物質として期待され、化学物理を問わず数多くの研究が進められている。特に有限サイズのグラフェンナノフレーク(GNF)が見せる開殻性は、その特異な物性の起源として大きな注目を集めている。一方、近年我々は新規な高効率非線形光学(NLO)物質として開殻分子系に着目し、特に中間的な開殻性を有する分子系が、閉殻系に基づく従来の物質に比べて非常に大きな三次NLO物性を示すことを理論的に予測し、また実験的にも証明した。そこで我々は新規開殻NLO分子系としてGNFに着目し、これまで研究を進めてきた。 本年度は三角形GNFを構成単位とした一次元連結分子系における開殻性および三次NLO物性の微視的起源である第二超分極率γについて量子化学計算に基づき調査した。その結果、系はユニット接続方式のわずかな違いによって非常に多様なマルチラジカル性を発現し、複雑な構造依存性を持つことが判明した。それに応じて系のγ値もまた大きく変化する事が示された。また、六角形GNFにおいて分子内の欠損(アンチドット)構造が系の開殻性およびγ値に与える影響についても検討した。その結果アンチドットサイズの増大によって系の開殻性は交互に減少増大し、非単調な変化を示すことが判明した。それに伴いγ値にも変化が見られた。いずれの系においても、過去の開殻NLO分子系に対する研究同様、中間的な開殻性を示す分子でγが顕著に増大するという特徴を示した。以上の研究結果から、開殻GNFに基づく新たなNLO物質の設計および物性制御指針が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初一年目の研究計画として予定していた、三角形ユニットからなる一次元連結GNFにおける開殻性と三次NLO物性の解明だけでなく、二年目の研究計画であったアンチドット構造がGNFの物性に与える影響についても既に研究結果が得られている。それらの成果は国内外の学会にて発表すると共に、国際的に著名な学術雑誌に論文を投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで主に対称型のものに限ってきた計算対象を非対称型GNFへと拡張し、ジグザグ端部分へのドナー(D)/アクセプター(A)置換基の導入による、系の非対称化効果について検討する。一般に非対称分子系では、対称分子系とは異なるエネルギー準位間の遷移過程が許容されるため、これに由来するY値の変化が期待される。また、単純な置換基効果だけでなく、異なる部位にDA基を持つ分子同士で比較を行うことで置換部位依存性についても検討すると共に、その起源を開殻電子の空間分布との関係に基づき解析する。
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Research Products
(13 results)