2012 Fiscal Year Annual Research Report
グラフェンナノフレークの開殻性と非線形光学特性についての理論研究
Project/Area Number |
11J01632
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
米田 京平 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | グラフェンナノフレーク / 開殻 / ラジカル / 非線形光学 / 第二超分極率 |
Research Abstract |
近年、単層グラファイトであるグラフェンが将来のエレクトロニクス、スピントロニクス、フォトニクスにおける基礎物質として期待され、化学物理を問わず数多くの研究が進められている。特に有限サイズのグラフェンナノフレーク(GNF)が見せる開殻性は、その特異な物性の起源として大きな注目を集めている。一方、近年我々は新規な高効率非線形光学(NLO)物質として開殻分子系に着目し、特に中間的な開殻性を有する分子系が、閉殻系に基づく従来の物質に比べて非常に大きな三次NLO物性を示すことを理論的に予測し、また実験的にも証明した。そこで我々は新規開殻NLO分子系としてGNFに着目し、これまで研究を進めてきた。 また最近我々は、中間ジラジカル分子において外部電場の印加やドナー・アクセプター置換基の導入が非常に大きな第二超分極率γ(三次NLO物性の微視的起源)の増大を引き起こすことを理論的に予測した。そこで本研究では四角形GNFを対象とし、これらに対する置換基効果を量子化学計算により検討し、ジラジカル因子および三次NLO物性との相関について調査した。その結果、GNFにおいても中間開殻性を持つ系で置換基導入によりγ値が著しく増大することが判明した。また、無置換系からのγの増大率が置換基導入部位に対して顕著に依存することが分かったが、比較対象として閉殻GNFについて検討したところ同様の置換部位依存性は一切見られず、開殻GNF特有の現象であることが示された。この特異なγ増大率の構造依存性は、開殻性の空間的寄与を表す奇電子密度分布に基づいて説明できることが判明した。 以上の研究結果から、開殻GNFに基づく新たなNLO物質の設計および物性制御指針が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初計画していた、開殻GNFへのドナー・アクセプター基の導入による非対称化効果の検討に着手し、開殻GNFの新規な分子構造依存性を見出すとともに、その機構の理論的な解明にも成功した。これらの研究成果は国内外の主要な学会にて発表すると共に、国際的に著名な学術雑誌に論文を投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では主に、単一のGNF分子における開殻性およびNLO物性の幾何構造依存性に着目してきたが、今後はさらに分子間相互作用の効果についても検討する。最も単純な開殻GNFの1つであるphenaleny1を用い、この二量体をモデル系として分子間距離に応じた開殻性の変化を解析し、それに伴う三次NLO物性への影響について調査する。またさらに系を四量体へと拡張し、マルチラジカル化の効果についても検討する。
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