2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J01672
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
北別府 悠 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | Coarse Ricci曲率 / Bishop-Gromov不等式 / ランダムウォーク / 勾配流 |
Research Abstract |
23年度はまず距離空間のcoarse Ricci曲率の具体例をたくさん計算する方法を探した。その結果Bishop-Gromov不等式と呼ばれる幾何学的な条件があれば特別なランダムウォークに対して曲率の下限が求められることを示した。これはリーマン多様体にとどまらず曲率次元条件を満たすような測度距離空間全体に適用できる結果なので曲率と幾何学の深い関係が見て取れるものだといえる。さらに今までに知られている曲率の下限の具体例は有限グラフで性質のいいものしか得られていなかった。例を大量に増やしこともこの結果の意義の一つである。またさらに多様体上の熱核から定まるランダムウォークに対しても曲率の下限を与えた。その下限は多様体のRicci曲率の下限と密接に関係している。これは、Nice大のNicola Gigli氏の助言によるものである。この結果はまさに空間の解析の情報から幾何学的な情報を引き出したものだと言える。その方針は熱流を確率測度の空間のあるエントロピーの勾配流とみなすことであり、これもリーマン多様体よりも広いかなりの距離空間に一般化されているのでその部分は目下勉強中である。また曲率の下限が正になるようなランダムウォークというものは非常に確率論的な手法と相性がよく解析しやすい。そこで次にそのようなランダムウォークを持つような距離空間は幾何学的に特徴付けられないだろうかと考え研究を行った。その結果任意のCAT(0)と呼ばれる空間に対して正のcoarse Ricci曲率を持つようなランダムウォークを構成できた。この空間は非正曲率空間の性質を持っており、このような空間が正のcoarse Ricci曲率を持ちうるのは想定外であった。さらに構成法より曲率が負の方向に曲がっていればいるほどcoarse Ricci曲率は正になりやすくなることも分かった。これは大方の予想を覆すものであり、想定外の結果であるが故に非常に面白いと思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は具体例を探していくというのが大きな目標の一つであったが、曲率が下に有界な空間、曲率が上に有界な空間および解析的な情報から定まる曲率の下限、などの様々な空間で下限の存在を示すことが出来た。その意味で順調に進んでいる。他方coarse幾何学との関連はあまり進展がなかったが、最近coarse不変量と曲率の関係が少しわかってきたのでおおむね順調と言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としてはまず一次のWasserstein空間の幾何学を深く進め、coarse Ricci曲率とcoarse幾何学の関連を探ることが重要である。離散的な対象も含めて議論をする以上、このWasserstein幾何学を研究することが測度を込めた幾何学を構築する一番の方法であると思われる。その際問題なのは空間の凸性があまり遺伝しないことである。二次のWasserStein空間はこの凸性を通して底空間の幾何学と深く結びついている。そのため一次のWasserstein幾何学を進めるためには別のアプローチを用いる必要があると思われる。そこでcoarse Ricci曲率で得られた結果を用いて種々の関数不等式を導ければ、幾何学と結びつくのではないかと考えている。
|
Research Products
(4 results)