2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J01672
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
北別府 悠 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Coarse Ricci曲率 / Wasserstein空間 / Gromov-Hausdorff収束 |
Research Abstract |
本年度は昨年度に引き続きcoarse Ricci曲率の研究に精力を注いだ。Coarse Ricci曲率の下限条件から微分幾何学的な制限が得られないかと思い前半は様々な試みを行っていたが、非正曲率空間の一般化であるCAT(0)空間上に正の値の下限をとるようなrandom walkを構成することが出来てしまったので、方向性を変えることにした。まずrandomwalkを距離空間からその上のWasserstein空間への写像と捉えなおすことによりいくつかの結果を得た。まずはじめにrandom walk付の距離空間のWasserstein空間の上に自然なrandom walkを構成した。そのrandom walkを用いてcoarse Ricci曲率を考察すると下限を持ち、しかも元の距離空間上のcoarse Ricci曲率の下限と一致することが示せた。これは任意の完備可分距離空間で成り立つのでもちろんグラフに対しても成り立つ。さらにこの結果は、曲率次元条件を満たすような測度距離空間上のWasserstein空間は一般に曲率次元条件を満たさないというChodoshの結果に対して非常に対照的な結果である。これにより曲率次元条件よりもcoarse Ricci曲率のほうがある意味で弱い定義であることが裏付けられ、coarseな幾何学との相性がよいことが期待される。もうひとつの結果は距離空間のGrmov-Hausdorff収束に対するcoarse Ricci曲率の安定性である。これはコンパクトのときにはすでにOlIivierによって得られていたが、非コンパクトの場合は知られていなかった。この結果によって特別なケースにおけるプレコンパクト性も示すことができ、coarse Ricci曲率の微分幾何学的な扱いを可能にするであろう。本年は積極的に海外の研究集会にも参加し、夏にはロシアのサンクトペテルブルグでの講演も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の最終目標はcoarseRicci曲率を用いてcoarse幾何学を発展させることにある。その点において現在の進捗状況はやや遅れている。しかしながらcoarseRicci曲率の様々な特性、coarse幾何学との相性の良さのなど昨年度に明らかになったことの重要性は疑う余地もない。したがってやや遅れているが、計画を敷衍した研究が遂行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はcoarseRicci曲率を用いてcoarse幾何学的な量を導くということを考える。しかしながら昨年度の研究にもあるようにいまだ距離空間上のcoarseRicci曲率そのものの基本的な問題が数多くあるように見受けられるので、その研究が大半になると思われる。特にグラフ上のcoarseRicci曲率を計算する手法をいまだに見つけられていないのでその部分の研究を第一に行っていきたい。
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Research Products
(7 results)