2011 Fiscal Year Annual Research Report
超音波応答性自己組織化型バブルリポプレックスの構築と新規遺伝子治療技術の創成
Project/Area Number |
11J01723
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黒崎 友亮 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 遺伝子治療 / Drug delivery system / 核酸 / タンパク質 / ワクチン |
Research Abstract |
申請者はこれまで、数種の特殊な負電荷化合物を用いて遺伝子医薬品を自己組織化することで、安全性を向上し、かつ負電荷化合物に対応した特定の臓器へ選択的に遺伝子を導入しうる自己組織化型遺伝子ベクターの開発に成功した。しかしながら、この新規技術の臨床応用のためには、より選択性と遺伝子導入効果を向上させる必要があった。 そこで、本年度は、申請者が開発した自己組織化型遺伝子ベクターに京都大学橋田研究室が有する超音波応答性バブルリポプレックスの技術を応用する事で、標的臓器へ選択的に遺伝子とマイクロバブルを送達する、生体適合性の自己組織化型バブルリポプレックスの開発とその物理化学的性質の評価を行った。また、タンパク質医薬品を自己組織化する技術開発にも取り組み、タンパク質ベクターの構築を行った。 この結果、遺伝子医薬品に複数の正電荷化合物と負電荷化合物、及びマイクロバブルを組み合わせた新たな構造体の構築に成功した。この構造体は粒子径が約500nmの負電荷の微粒子であり、高い効果と生体適合性を示した。 また、タンパク質医薬品を自己組織化する技術開発の結果、抗原タンパク質を抗原提示細胞に効率的に送達することが可能な新規ワクチンベクターの開発に成功した。このベクターはモデル抗原として卵白アルブミンを内包した微粒子であり、卵白アルブミンと、臨床で添加剤として用いられている塩化ベンザルコニウム、生分解性で安全な高分子であるpolyglutamic acidからなる。このベクターをマウスへ投与した結果、卵白アルブミン単独と比較して顕著に高い免疫誘導効果が得られた。さらに、免疫したマウスに卵白アルブミン発現癌細胞を移植した結果、癌の増殖を完全に抑制することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、本年度は超音波応答性自己組織化型バブルリポプレックスの構築と超音波照射条件の最適化を行う予定であった。この結果、計画通りに遺伝子を内包した超音波応答性自己組織化型バブルリポプレックスの構築に成功した。 また、タンパク質を内包した超音波応答性自己組織化型バブルリポプレックス構築の為にタンパク質の微粒子化法の開発を行い、安定な微粒子を形成することに成功している。今後、速やかな超音波応答性自己組織化型バブルリポプレックスへの応用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、開発した超音波応答性自己組織化型バブルリポプレックスの遺伝子導入効果を臓器ごとに精査し、臓器ごとに最適化を行う。特に超音波の照射条件やタイミングなどの最適化を行い、製剤と超音波照射による毒性に関しても精査する。また、臓器ごとに超音波応答性自己組織化型バブルリポプレックスを用いて遺伝子を導入し、遺伝子が導入されている細胞を同定する。さらに、導入細胞から肝炎や腎不全、癌などのどのような疾患への応用が可能かどうかを考察し、疾患への応用を目指した基礎的検討を行う。 また、マンノースなどの糖鎖やペプチドを用いることによって、さらに臓器選択性を高めた製剤の開発についても検討し、効率的に遺伝子医薬品を送達する技術開発を行う。
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