2012 Fiscal Year Annual Research Report
超音波応答性自己組織化型バブルリポプレックスの構築と新規遺伝子治療技術の創成
Project/Area Number |
11J01723
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黒崎 友亮 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 遺伝子治療 / Drug delivery system / 核酸導入 / 標的指向化 |
Research Abstract |
申請者は生体適合性材料からなる遺伝子導入用キャリアに超音波造影ガスを内包することによって超音波応答性の生体適合型遺伝子導入キャリア、バブルリポポリプレックスの開発を行った。本キャリアは全ての成分が医薬品ないしはその添加物として既に臨床使用実績のある安全な化合物のみから構成されており、速やかな医療展開への応用が可能であると考えている。 このバブルリポポリプレックスの構成成分の最適化を行った結果、pDNAとカチオン性高分子であるプロタミン硫酸、DSPG(distearoylphosphatidylglycerol)を用いたアニオン性リポソームを用いた場合に、最も安全かつ効果的な遺伝子導入が可能であることを見出した。 このバブルリポポリプレックスを細胞に添加した結果、細胞障害性をほとんど示すことなく、高い安全性が示唆された。さらに、超音波と併用しなかった場合にはほとんど遺伝子導入効果を示さず、超音波を照射した場合にのみ高い遺伝子導入効果を示した。また、静脈内投与後に特定の臓器に超音波を照射することで、照射した臓器選択的に高い遺伝子導入効果を示すことを見出しており、これまでに、肝臓、腎臓、脾臓、心臓、肺、腫瘍において高い遺伝子導入効果を得ることに成功している。さらに、バブルリポポリプレックスに癌指向性のペプチドを応用することによって、血管内皮細胞での遺伝子導入効果を大幅に向上することにも成功しており、バブルリポポリプレックスはリガンドを用いて修飾することによって標的指向性を付与することが可能である。 このように生体適合性材料のみから構成され、安全かつ高い遺伝子導入効果を示す標的指向型遺伝子導入キャリアについての報告は稀有であり、有用性が高い。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では新規に開発した超音波応答性の生体適合型遺伝子導入キャリア、バブルリポポリプレックスの遺伝子導入特性の解明と最適化を行う予定であった。実際には、この製剤に用いる化合物の最適化を行い、最適な組成と混合比を見出した。また、最適化した製剤の遺伝子導入特性について検討し、さらに製剤のリガンド修飾を行った。以上のように、本年度は計画通りの研究成果が得られており、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに、バブルリポポリプレックスの組成の最適化、遺伝子導入特性の解析を行い、バブルリポポリプレックスの基礎的な情報を収集した。今後は、バブルリポポリプレックスに薬理効果を示す遺伝子を封入し、疾患モデルマウスの肝臓や腎臓、心臓に導入することで、治療効果について検討する。さらに、siRNAやmRNAなどのpDNA以外の核酸医薬品についての検討を行う。RNAはRnaseによる分解など生体内では非常に不安定であり、静脈内投与後の安定化について検討を行う必要があるが、カチオン性高分子やアニオン性リボソームの組成をRNAに最適化することで対応が可能であると考えている。
|