2012 Fiscal Year Annual Research Report
σ及びπ共役系をスペーサーとする高周期14族ラジカルの合成と物性
Project/Area Number |
11J01746
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
野澤 竹志 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有機ケイ素化学 / シリルラジカル / オリゴラジカル / 高スピン化学 / オリゴシラン / σ共役 |
Research Abstract |
最近我々は2つのケイ素ラジカルを一般的なπスペーサーであるベンゼン環のp-位及びm-位に集積させたビス(シリルラジカル)の合成及び単離に成功し、パラ体が基底一重項のキノイド構造を持つ一方メタ体が高スピン基底三重項状態を持つことを明らかにした。更にベンゼン環の1,3,5-位で3つのシリルラジカル中心を連結した基底四重項のトリス(シリルラジカル)の合成も達成している。 さらにオリゴシラン鎖で二つのシリルラジカル中心を連結したケイ素ビラジカル種を次なる合成ターゲソトとした。オリゴシラン鎖はπ共役系に類似して、電子がσ結合に沿って非局在化するσ共役を発現することが知られている。そのようなσ共役系でラジカル中心を連結した分子の構造やスピン間相互作用に興味が持たれるが報告例は皆無であった。前年度はジシラン鎖架僑ケイ素ビラジカルの合成法を確立したが、本年度はその電子状態や反応性について検討した。まず、EPRスペクトルの検討からジシラン鎖架僑ビラジカルもベンゼン架橋体と同様に基底三重項分子であることが分かった。理論計算によっても今回のビラジカルが基底三重項分子であることは支持されたが、三重項-一重項間のエネルギー差はベンゼンで架橋した場合と比べて小さかった。このエネルギー差の減少はケイ素ラジカル中心と同じ第三周期の軌道をもつジシラン鎖においてラジカル-スペーサー間の軌道相互作用が効果的に発現した結果であることが分子軌道計算の結果により判明した。続いてビラジカルの反応性についても検討したところ、今回合成したビラジカルは溶液中で、中央のジシラン鎖の結合会裂することで二分子のジシレンとの解離平行にあるという興味深い性質を明らかにした。これまでに様々なジシレンの合成が報告されているが、ジシレンの二量化によりビラジカルが発生することを示したのは本研究が初めてである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではπ及びσ共役系により連結した高周期14族元素ラジカル間の相互作用を明らかにすることを目的としているが。本年度までにπ共役系及びσ共役系により連結されたビスシリルラジカルの合成手法を確立した。また各々の基底多重度を明らかにし、連結子を介したスピン間相互作用について比較を行うことが出来た。ただし、現段階ではσ共役系についてその構造を決定するにはいたっていない。ラジカル-連結部位間の相互作用が構造に与える影響についても興味が持たれるため、構造解析を目標に検討を続ける。
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Strategy for Future Research Activity |
ジシラン架橋ケイ素ビラジカルにおいて、ケイ素ラジカル中心とオリゴシラン鎖との相互作用により連結オリゴシラン鎖の結合長がどの様に変化するか調べることでスピン伝達に関する詳細な知見を得る。現在ジシラン鎖架僑ケイ素ビラジカル種について、X線結晶構造解析を検討中である。しかし、骨格のオリゴシラン鎖のコンフォメーションによるディスオーダーのために質のよい解析データが得られていない。オリゴシラン鎖のコンフォメーションは骨格上の置換基により影響を受けるため、現在置換基を様々に換えた系について検討中である。 また、鎖長の変化がラジカル間相互作用与える影響について調べるために架橋部分をトリシラン鎖に伸長した系についても検討していく。
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Research Products
(3 results)