2011 Fiscal Year Annual Research Report
アンデス高地の南米ラクダ科牧畜における技術と人々の暮らしの変容
Project/Area Number |
11J01928
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佃 麻美 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アンデス / アルパカ / 品質改良 / 繁殖用固体 / 品評会 / 雇われ牧夫 |
Research Abstract |
23年度、前半においてはアンデスだけではなく、他地域も含めた牧畜について英語、スペイン語を含めた文献研究を行い、その類似点と差異について比較検討を行った。また、経済人類学、開発人類学に関しても同様に知識を深めるよう努めた。またこれまで収集したデータの整理を行い、特に、現在のインフォーマントが重要視している家畜品評会について、日本の家畜品評会である共進会との比較も行いながら、どのようなデータが不足しているかを明らかにした。10~12月にかけては、ペルーにおいておよそ2か月の海外調査を行った。スペイン語の更なる上達と、現地語であるケチュア語の習得を目指して語学学習を進めた。同時に、インフォーマント宅に住み込み、参与観察を行った。アルパカの品質改良が推進される中で、どのようにして繁殖用の生体個体が取引されているかについて、データを収集した。これにより、家畜飼養者同士の個人的な売買だけではなく、地方自治体に対してより大規模な家畜取引を、転売というかたちで行っているということが分かった。これにはインターネットでの競売により入札するという新しい科学技術の導入も関係している。地方自治体は農村を支援するため、アルパカを無料で提供しており、また生体個体の中でも、まだアルパカ飼養を盛んに行っていない場所に導入される個体、品質改良を進めるための良質な個体その中間という区別が飼養者の中ではなされており、価格にもかなりの格差があることも明らかとなった。その他、現在の家畜飼養においては重要な役割を果たしていると思われる雇われ牧夫について、その雇用形態がどのようなものであるかについてデータを収集した。また、日本では収集することが難しいアンデス牧畜研究、農村研究、農村開発に関する現地のスペイン語文献を収集することに努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
23年度、前半においては、牧畜研究や、経済人類学、開発人類学についての文献研究を行い、アンデス牧畜について比較・検討を行うとともに、今後の現地調査において収集すべきデータが何であるかなどを明確にした。また、10~12月には、現地調査をおよそ2か月間実施した。調査において不可欠であるスペイン語、現地語のケチュア語の語学学習を行い、語学の上達に努めるとともに、さらなるデータの収集を行った。さらに、2~3月にかけては学会等で発表を行い、これまでの研究成果を報告するとともに、いかなるデータが不足し、どの部分が議論しつくされていないかなど、問題点を明らかにすることに努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、研究計画通り、ペルーにおける長期調査を実施する。そして第一に、アンデス高地においてアルパカを飼養するための技術、品質改良のための技術についてデータを収集する。第二に、アルパカの生体個体、毛、肉がどのように取引されているかについてのデータを収集する。特に、品質改良が推進されている場においては、生体個体の取引が大きな意味を持っていることが予想され、これに関する情報を重点的に集める。第三に、家畜飼養者同士、雇われ牧夫、品質改良を推進する組織など、人々の社会的ネットワークがどのように構築されているかについて調査を行う。第四に、人々のライフ・ストーリーについて広く聞き取り調査を行い、アンデス牧畜の過去からの変遷を捉え、またその将来についてどのように展望しているかを明らかにする。
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