2012 Fiscal Year Annual Research Report
アンデス高地の南米ラクダ科牧畜における技術と人々の暮らしの変容
Project/Area Number |
11J01928
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佃 麻美 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ペルー / アルパカ / 家畜品評会 / 生体個体の売買 / 競売 / 品質改良プロジェクト / ライフヒストリー |
Research Abstract |
24年度、昨年度から引き続き、牧畜や経済人類学などに関する文献研究を行ない、6月には日本文化人類学会研究大会において発表した。 7月から翌2月にかけては、ペルーにおいておよそ7ヶ月の海外調査を行なった。はじめ3ヶ月間は、毛にクスコにおいてケチュア語の集中的な語学学習を行い、語学力の向上に努めた。 その後、インフォーマント宅に住み込み、参与観察を行なった。家畜品評会の参加状況を聞き取り調査した結果、良質なアルパカを持っていることを宣伝するため、近隣だけでなくかなり遠い品評会にも参加していること、年によってどの都市で開催される品評会に参加するかは異なることが分かった。 アルパカの生体個体の売買に関しては、個人的な取引に加え、インターネットを通じた競売についても聞き取りと参与観察によって調査した。競売では大規模な売却を行なうため頻繁にアルパカを購入しており、これは家族の一員が知り合いなどを訪ねて、実際にそれぞれの個体を確認しながら進められている。 また、生体個体を購入した地方自治体でどのような取り組みが行なわれているかについてもデータを収集をし、契約書を交わして年毎に種オスを貸し出すという方法をとっている場合や、村の共有の家畜として引き渡される場合があることが分かった。その他、品質改良をすすめるプロジェクトは干し肉の作り方や病気の治療についての指導、毛を太さによって選別する方法、施設の充実などさまざまな活動を行なっている。 さらに、各人のライフヒストリーについても、特にどのようなきっかけで品質改良を始めたかを中心に、聞き取りを行なった。 その他、生殖管理における交尾をさせる方法の変化、太陽光電池の導入、新たな家の拡張、次世代への家畜の分与、雇われ牧夫の変遷など、継続して観察することによって、変化がめまぐるしくおこっていることが垣間見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
24年度、昨年度に引き続き文献研究と学会における発表を行い、先行研究について知識を深めるとともに、不足しているデータを洗い出した。 7月からは7ヶ月にわたるペルーにおいて長期学術調査を実施した。込み入った聞き取り調査に必須である現地語のケチュア語の上達に努めるとともに、インフォーマント宅に住み込み、データの収集を行なった。家畜を管理する技術、家畜品評会、生体個体の売買、家畜の品質改良を進めるプロジェクトの取り組みについての参与観察、ライフヒストリーの聞き取りなど、広範なデータを集めた。さらに帰国後は、データの整理、分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、研究計画通り、まず文献研究と調査の結果をまとめる。そして、アンデス牧畜文化における現状とその変容について、各研究会において積極的に発表をし、議論を深める。そこで不足したデータについて明確にした上で、補足的な調査を行う。村における悉皆調査も行い、当該地域における牧畜社会全体の把握を目指す。博士論文執筆に向けて、データの整理、分析をすすめる。
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