2012 Fiscal Year Annual Research Report
トキソプラズマ原虫の潜伏感染を制御する原虫プロテインキナーゼの機能解析
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11J02037
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉 達紀 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | トキソプラズマ / プロテインキナーゼ / 潜伏感染 |
Research Abstract |
(1)TgMAPK1に変異を導入した原虫株の作出 機能的TgMAPK1発現の可能性について検証した。タンパク質C末領域に機能未知の領域を持つアイソフォーム(全長型)の存在をRT-PCRにて確認し、トキソプラズマ原虫内での強発現に成功した。全長型アイソフォームでの変異型のTgMAPK1の強発現が1NM-PP1への耐性を示したため、機能を発現するのに全長型のアイソフォームが必要であることがわかった。 (2)耐性原虫を用いた、TgMAPK1の機能解析 宿主細胞への侵入および脱出の機能については、耐性株と親株は同様に阻害剤による抑制効果を受けた。宿主細胞内での細胞分裂の速度においては、侵入後12時間、24時間において親株が受ける抑制効果と比べて、耐性株が受ける抑制効果は有意に減少していた。TgMAPK1のシグナルがONであるときには、タキゾイトの細胞分裂を維持し、OFFとなった時に細胞分裂を停止して潜伏感染へと誘導されていることが示唆された。 (3)交叉耐性の検証 1NM-PP1が含まれる、Bumped kinase inhibitor (BKI)は宿主細胞が感受性のプロテインキナーゼを保有していないことから、選択的な抗トキソプラズマ原虫薬としての開発が期待されている化合物である。 耐性株において、BKIである3BrB-PP1および3MB-PP1について、阻害効果を解析したところ、L162Qの変異を持つTgMAPK1はいずれにも耐性を与えること、I171Nの変異を持つTgMAPK1は1NM-PP1に特異的に耐性を与えること、3BrB-PP1に対する交叉耐性は3MB-PP1に比較すると少ないことが明らかとなった。耐性のできにくいBKI化合物を開発するうえでの重要な知見を与えると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
潜伏感染誘導を引き起こすプロテインキナーゼシグナルとしてTgMAPK1遺伝子の関与を明らかにし、TgMAPK1遺伝子の機能解析を行うことに成功している。in vitroのアッセイ系の構築には至っていないが、機能的組み換えタンパク質の発現に必要である、機能的であるTgMAPK1遺伝子のスプライシングアイソフォームを明らかにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
原虫内で発現している機能的TgMAPK1のスプライシングアイソフォームを用いて、組み換えタンパク質を利用したin vitroでのTgMAPK1活性評価の系を作成する。 TgMAPK1が関わるシグナルが、すでに報告されている他の刺激因子であるpHや温度の変化といったストレスとどのように関連しているかを解析する。
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Research Products
(3 results)