2011 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質徐放制御を目指した自己組織化体を組み込んだ新規組織接着性ゲルの創製
Project/Area Number |
11J02167
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
内田 裕介 東京農工大学, 大学院・工学府, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高分子ミセル / 自己組織化体 / 組織接着性ゲル / ブロック共重合体 / 徐放制御技術 |
Research Abstract |
本研究では、(1)タンパク質の内包・徐放を可能とする新規自己組織化体(『三層構造』型高分子ミセル)の開発、(2)得られた自己組織化体を架橋構造として利用した「合成高分子のみからなる」新規組織接着性ゲルの開発、(3)動物実験による組織接着性ゲルの性能評価、という三つの実験課題を進めることにより、「『タンパク質徐放を可能とする』新規バイオマテリアルを開発し、その医療応用を目指すこと」を目的とする。平成23年度は、三層構造高分子ミセルの物性評価および調製条件の最適化に加え、三層構造高分子ミセルを架橋点とするゲルの形成特性評価を行った。三層構造高分子ミセルの物性評価の結果、三層構造高分子ミセルが親水性物質を内包可能であること、および中空構造を有する構造体であることを確認した。三層構造高分子ミセルの調製条件を再検討したところ、副生成物の形成は抑え、三層構造高分子ミセルが優先的に調製可能な最適調製条件を見出すことに成功した。 さらに、三層構造高分子ミセルとポリエチレンイミン(PEI)から形成させたゲルの貯蔵弾性率(ゲルの"固さ")は、PEIとミセル溶液の濃度やpH、PEIの分子量によって調整可能であることがわかった。また、いずれの場合もゲルは迅速に(1秒以内)形成した。さらに、似た構造を有する二層構造高分子ミセルを架橋点としたゲルと貯蔵弾性率を比較したところ、三層構造高分子ミセルを架橋点としたゲルの方が貯蔵弾性率は高くなった。これは、架橋部位の構造安定性という観点から予想される結果とは逆の結果である。三層構造高分子ミセルが有する柔軟性によりこのような特異的な結果が得られたと考えられ、三層構造高分子ミセルはバイオマテリアルとしての応用だけではなく、超分子の観点から見ても非常に興味深い構造体であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度において、本申請者は三層構造高分子ミセルの物性評価及び調製条件の検討、さらに三層構造高分子ミセルを架橋点とするゲルの形成特性評価を遂行した。その結果、三層構造高分子ミセルという新しい構造体が形成していることを確認し、その最適な調製条件を見いだすことに成功した。さらに、この新しい構造体を架橋構造として組み込んだゲルの試作に早くも成功した。以上より、当該研究課題を立ち上げた当初の予想よりも、成果を上げているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、様々な条件下でゲルを形成させ、ゲル形成速度やゲルの貯蔵弾性率・損失弾性率に及ぼす諸因子(各成分濃度、pH、三層構造型高分子ミセルを形成するブロックポリマーの組成等)の影響を、粘弾性測定装置によって明らかにする予定である。さらに、得られたゲル形成に関する知見から、物質徐放に適した特性を有するゲルを調製し、ゲル中に内包させた物質の徐放特性評価をする予定である。
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