2012 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質徐放制御を目指した自己組織化体を組み込んだ新規組織接着性ゲルの創製
Project/Area Number |
11J02167
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
内田 裕介 東京農工大学, 大学院・工学府, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高分子ミセル / 自己組織化体 / 組織接着性ゲル / ブロック共重合体 / 徐放制御技術 |
Research Abstract |
平成24年度は、三層構造高分子ミセルを架橋点とするゲルの形成特性評価を昨年に引き続き行った。加えて、三層構造高分子ミセルの膜構造の制御を目的として、ブロック共重合体の種類がミセル形成に及ぼす影響の評価を行った。三層構造高分子ミセルとポリエチレンイミン(PEI)を混合した際のゲル形成特性評価を、目視評価、および粘弾性測定装置を用いて行った。その結果、ゲルの構造安定性はゲルのpHに大きく左右されることが分かった。さらに、ミセルおよびPEIの反応性が低くなるようなpH条件において、高弾力のゲルが得られることが分かった。架橋効率を上げ「固い」ゲルを得るために、ミセルおよびPEIの反応性が高くなるpH条件でもゲルを調製してきたが、このような高弾力のゲルは実現できていなかった。これらの結果より、ゲル前駆体の反応性がゲル特性に及ぼす影響の新しい知見が得られたと考えている。三層構造高分子ミセルの原料ブロック共重合体として、新たに疎水部にポリL-乳酸ブロックを有するPEG-PLLAブロック共重合体を合成し、三層構造高分子ミセルの調製を試みたが、三層構造高分子ミセルの形成は確認できなかった。これは、疎水部の分子量が十分ではなかったためであると考えられる。ポリL-乳酸ブロックをシェルとする三層構造高分子ミセルは構造安定性がより高くなると推測される。ポリL-乳酸ブロックをシェルとする三層構造高分子ミセルを調製できれば、構造安定性の高低がゲルの物性に及ぼす影響を評価することが可能となり、より基礎的なゲルの物性の知見が得られると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本申請者は、タンパク質徐放制御を目指した自己組織化体を組み込んだ新規組織接着性ゲルの創製を目指し、三層構造高分子ミセルの物性評価及び調製条件の検討、さらに三層構造高分子ミセルを架橋点とするゲルの形成特性評価を遂行した。その結果、三層構造高分子ミセルを架橋構造として組み込んだゲルに関して、架橋構造のミクロな物性がゲルのマクロな物性に大きな影響を及ぼすことなど、数多くの興味深い成果が得られた。これらの成果は、J. Posym. Sci : B. Polym. Phys.に原著論文として掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、様々な条件下でゲルを形成させ、ゲル形成速度やゲルの貯蔵弾性率・損失弾性率に及ぼすゲル内部構造の影響を、粘弾性測定装置によって明らかにする予定である。得られたゲル形成に関する知見から、物質徐放に適した特性を有するゲルを調製し、ゲル中に内包させた物質の徐放特性評価を行い、組織再生の促進効果などを評価する評価する予定である。
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