2012 Fiscal Year Annual Research Report
動的な配位空間の精密制御による協同的分子吸着システムの創成
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11J02365
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福島 知宏 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 多孔性金属錯体 / 吸着特性 |
Research Abstract |
近年ゲスト分子の吸脱着に際し、その構造を柔軟に変化させる多孔性金属錯体は新たな多孔性材料として注目を集めている。構造柔軟な錯体では、吸着前は非多孔体の構造を有するために細孔内への吸着は起きないが、ある圧力で構造転移が生じ突如ゲスト分子の吸着を開始するゲート型吸着と呼ばれる現象が知られている。これは構造転移であるが故に分子設計が非常に困難を極め、いまだその合理的設計指針は確立されていない。そのために系統的に錯体を合成し、その起源の検討を行うことは重要である。 本年度申請者は、同型の構造を有する構造柔軟な多孔性金属錯体を系統的に合成し、ゲート型吸着に対する金属イオンの効果について検討を行った。[M(NO2-ip)(bpy)]n(M=Zn,Ni,Mn,Co;NO2-ip=5-nitroisophthalate;bpy=4,4'-bipyridyl)これらの錯体はいずれも同型の構造を有しており、吸着前には非多孔体、吸着後には多孔体であることがX線構造解析により分かった。X線構造解析また赤外分光測定から、配位中心の金属イオンのイオン半径が大きくなるほど、配位結合の強度が弱くなっていることが実験的に明らかになり、また量子科学計算からもそのことがサポートされた。これら化合物は先述したように構造転移を示すため、中心金属種にかかわらずいずれの錯体もゲート型吸着を示す。またこれらの錯体は金属イオン種に依存してステップを伴う吸着挙動における違いが観測された。さらにこの最終的な吸着量は中心金属イオンのイオン半径が大きくなるにつれて、吸着量が増大することが分かった。また吸着等温線における立ち上がりの急峻さに着目したところ、中心金属のイオン半径が大きくなるにつれて、緩やかな等温線を示すという傾向が見られた。中心金属のイオン半径が大きくなった場合配位中心の構造が多様な構造をとり得るために、分子認識を伴い構造変化し、かつ多重な構造安定性がそれぞれの間の協同性を失い緩やかな吸着挙動を与え、このような吸着挙動の違いに至ったものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は多孔性金属錯体における分子設計の基盤となる技術を確立し、錯体化学、量子化学の観点からも興味深い知見を与えると考えられる。また現在萌芽的に多孔性金属錯体を用いることで始めて出る機能を見いだしており、期待できる。以上のことから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は多孔性錯体の吸着帰国を評価するため、装置の構築中である。また海外留学を経験し、そこで得られた知見を元に新たな展開を推し進めようとしつつある。
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