2011 Fiscal Year Annual Research Report
テロメア短縮に応答して誘導される細胞生理変化とその分子機構の網羅的解析
Project/Area Number |
11J02554
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
松井 愛子 千葉大学, 大学院・融合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | テロメア短縮 / 老化 / オートファジー / 細胞周期 / 出芽酵母 / TORC1 |
Research Abstract |
これまでの研究からテロメア短縮によって誘導される細胞老化では、タンパク質分解経路の1つであるオートファジーの誘導を始めとして、様々な形質変化が起こることが明らかとなった。しかし、これらの形質変化の分子機構は未だに不明なままであるため、細胞老化時に誘導されるオートファジーのシグナル経路の解明と生理的意義を明らかにすることを目指した。 オートファジーを誘導できない変異細胞には様々なものがあるが、そのうちの2種類の変異細胞でのみ老化速度が軽減されることがわかった。この表現型と類似したものに、カロリー制限による分裂寿命変化(F. Tang, et al., 2008)があったため、カロリー制限とオートファジー誘導要因であるTORC1活性との関係を解析したが、関連性は見られなかった。また、細胞老化時にTORC1活性が低下することを見出しているが、オートファジー欠損細胞では老化時にTORC1活性が低下しなかった。しかし、通常オートファジーが誘導される条件(窒素源飢餓)では、オートファジー欠損細胞でもTORC1活性は低下していた。この時、長時間窒素源飢餓培地で培養するとTORC1が再活性化することが野生型細胞でのみ確認された。そこで、このTORC1の再活性化の要因とその意義を解析した。 その結果、窒素源飢餓条件では、細胞は細胞周期をG2/M期で一度停止した後、オートファジー依存的にTORC1を再活性化し、G1期まで細胞周期を進行させることが明らかとなった。さらに、オートファジー欠損細胞では細胞成長が起こらないために核分裂異常の頻度が増加していたことから、オートファジーは正常な核分裂に必要であることが示唆された。 今回の結果から、細胞の核分裂と細胞成長には密接な関係があることが示唆され、老化細胞でそれらのバランスが崩れたために種々の生理的変化が生じることが推察できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、細胞老化時に誘導されるオートファジーのシグナル経路の解明と生理的意義を明らかにすることを目的として研究してきた。その結果、栄養飢餓条件下ではあるが新たなオートファジーの役割を見出すことができた。この新しい知見から、細胞の核分裂と細胞成長には密接な関係があることが示唆されたため、今回見出した現象は老化細胞でも当てはめて考えることができる。従って、老化細胞で誘導されるオートファジーの生理的意義の解明も近いのではないかと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果から、細胞の核分裂と細胞成長には密接な関連性があることが示唆された。そこで来年度は、老化細胞で細胞の核分裂と細胞成長のバランスが崩れたために異常が生じる、すなわちオートファジーが誘導されると仮定して研究を進めていく。また、細胞老化時に見られる他の生理的変化についても詳細な解析を行っていく。例えば、細胞老化時に液胞体積が増大する原因を、液胞の融合/分裂に関わる複合体に焦点を当てて解析を行っていく。さらに、出芽酵母だけではなく、ヒト培養細胞のテロメア短縮による細胞老化でも同様の現象が起こっているのかどうかを検証していくつもりである。
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Research Products
(3 results)