2011 Fiscal Year Annual Research Report
気候特性に適合した環境効率の高い市街地形態に関する研究
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11J02643
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
玄 英麗 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 建物配置 / 風通し / 日射遮蔽 / 熱的許容度 / SET^* |
Research Abstract |
1)屋外温熱環境の質(Quality)を評価するための新たな指標の提案 ある計画敷地を対象として、その屋外環境の質を評価するため、以下の3つの指標を用いた評価法を検討した。 Index 1:計画敷地内でSET*(新標準有効温度、温熱快適性を表す指標)が許容上限値以下となる領域の面積 Index 2:Index 1の値を計画敷地面積で基準化した数値 Index 3:Index 1の値を敷地内のオープンスペースの面積で基準化した数値 建蔽率が同じ場合の計画の優劣は、Index 1で評価できる。すなわち、Index 1の値が大きいほど、屋外空間の温熱環境の質(Quality)が高いと判断される。しかし、建蔽率が異なる計画が複数ある場合、Index 1では優劣が評価できない。そのような場合は、敷地全体内における人間が許容できる領域面積の割合を示すIndex 2を算出し、これにより環境の質(Quality)を評価する。このような評価を行った結果、いずれの計画もIndex 2の値が低く、改善案の検討が必要となる場合もあると考えられる。そのような場合には、各改善案に対して、敷地内のオープンスペースにおける人間に許容できる領域面積の割合を示すIndex 3を算出し、計画変更により、どれだけ屋外温熱環境の質(Quality)を向上させる余地があるかを把握することができる。 2)樹木の流体力学的効果・熱的効果を記述するサブモデルの組み込み 仙台と広州を対象として、建物隣棟間隔(D)と建物高さ(H)の比(D/H)を系統的に変化させた解析を実施し、1)で考案した評価指標を用いた評価を行った。この結果、仙台でのD/Hの最適値は0.24、広州でのD/Hの最適値は0.71となった。しかし、最適な建物配置の場合にも温熱快適性が低く、緑化(樹木等)による緩和手法が考えられた。樹木が屋外温熱環境に及ぼす効果として、(1)樹木による短波・長波の放射減衰、(2)樹木からの水蒸気発生に伴う絶対湿度の上昇と気温低下、(3)樹木による風速低下と乱れの増加等がある。樹木が屋外風・温熱環境に与える影響を定量的に評価するため、既存の解析システムに樹木の流体力学的効果・熱的効果を記述するサブモデルを組み込み、さらに野外実測とほかのコーディングと比較を行って、その精度を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度震災の影響で始動が遅くなったが、(1)屋外温熱環境の質(Quality)を評価するための新たな指標の提案、(2)樹木の流体力学的効果・熱的効果を記述するサブモデルの組み込み等ができ、実際の都市環境を高精度に予測・評価することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)2011年度に行った仙台と広州を対象とする検討に加えて、東京、上海、武漢等を対象とする解析を実施し、各地域に適した建物間隔(D/H)を求める(対象都市は、研究の進展をみて追加・変更)。 2)要因分解の手法を用いて、各地域において、風速、気温、MRT(平均放射温度)が屋外温熱環境に与える影響の寄与度を分析する。 3)冷房エネルギー消費とCO_2排出量の削減の観点からも検討を加える。 4)樹木モデルを組み込んだ解析システム(2011年)を用いて、樹木配置のケーススタディを行い、夏季の屋外温熱環境の改善のための樹木の最適配置を検討する。 5)計画敷地内の屋外温熱環境の質(Quality)と同時に、計画敷地内の建設行為が敷地外部の環境に与える環境負荷(Load)も考慮した新たな指標を提案する。 6)以上の結果により、気候特性に応じた最適な建物配置に関する基準を検討する。
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Research Products
(1 results)