2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J02671
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
清家 泰介 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 分裂酵母 / 接合フェロモン / GPCR / 生殖隔離 |
Research Abstract |
本研究は分裂酵母(S.pombe)の接合フェロモンとその受容体に突然変異を導入することにより、変異型同士で認識可能になった新規接合型ペアを創出することを目的とする。これらが野生型ペアから完全に隔離されていれば、生殖隔離を実験室レベルで解析することが可能になる。 過去に第1段階として、9アミノ酸からなるフェロモンに網羅的に突然変異を導入し、全152種のミスセンス変異体のうち、35種において接合能が欠損することを見出した。そこで平成23年度では、第2段階として変異型受容体(GPCR)に突然変異を導入し、先程の35の変異型フェロモンを認識可能になる変異型受容体の探索を試みた。そして大規模なスクリーニングの結果、現在まで9つの求める変異型受容体が得られている。これらの接合可能な変異型フェロモン/受容体をもって、人為的な新規接合型の酵母の作製に成功したと言える。 また得られた変異体の解析から、フェロモン/受容体タンパク質間の特異的な相互作用に必要なアミノ酸残基やドメインが少しずつ分かってきた。フェロモンに突然変異を網羅的に入れる研究において、接合能を失う変異は全てC末側半分の領域に見られた。そこでN末のアミノ酸を順に一つずつ削っていったところ、注目すべきことにN末側半分の領域は接合に必須ではないことが明らかになった。つまり、S.pombeにおいて受容体と作用する領域はフェロモンのC末側の5アミノ酸という非常に短い部分であることが示唆された(Seike et al. Genetics, in press)。この研究はまた、Gタンパク質共役型受容体とリガンドとの分子認識の理解に有用な情報を与えることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度では、接合能が欠損した変異型フェロモンを認識する変異型受容体のスクリーニングする予定であったが、計画通り行うことができた。そして現在まで求める変異型受容体を9個取得し、それらの変異部位をシークエンスにより全て特定した。平成24年度の計画としている野生型ペアと新規接合型ペアを混合培養し、生殖隔離を遺伝学的観点からも証明するという課題は現在準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方向として、創出した新たな接合型ペアが野生型ペアから生殖隔離されていることを遺伝学的な手法でも証明し、野生型・変異型の両生殖群を同じフラスコ内で混合して長期培養し、これらのゲノム進化の様子を観察したいと考えている。また、S. pombe の近縁種のゲノム情報を解析して、自然界での種分化の過程において、今回人為的に起こしたような変異が生じた痕跡を見出したい。そしてフェロモンと受容体の特異性の変化が生殖隔離のトリガーとなったという一つの仮説を検証することで、生殖隔離のメカニズム解明に迫りたいと考えている。
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