2011 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症幼児の『他者の意図』理解の発達プロセスと障害特性に関する研究
Project/Area Number |
11J02730
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
狗巻 修司 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 自閉症幼児 / 意図理解 / 相互交渉スキル |
Research Abstract |
平成23年度では、以下の2つの研究に着手した。 (1)自閉症幼児-保育者の相互交渉の縦断的観察 療育施設での縦断的観察から、自閉症幼児の他者理解の水準による相互交渉場面の質的際についての検討を行った。他者理解の水準として共同注意スキルを指標とし、1期「指さし理解・産出なし」、2期「指さし理解あり」、3期「指さし理解・産出あり」の3つの時期に区分した。その結果、3つの時期での相互交渉に質的な差異がみられた。具体的には、1期では注意転換を含むはたらきかけが相互交渉を破綻させていたのに対して、3期では保育者の注意転換を含むはたらきかけを行うことで相互交渉の回数が増加することが明らかとなり、子どもが他者の意図を理解する段階になると単に子どもの注意に寄り添うことだけでなく、時おり保育者主導のはたらきかけを行うことにより「間」をつくることの重要性が示された。 (2)自閉症幼児の意図理解に関する研究 D'Entemount&Yazbek(2007)の実験課題を改良し、自閉症幼児と発達遅滞幼児の意図理解について実験的検討を実施した。真体的な手続きとしては、実験者が行う失敗試行を子どもがどのように模倣するかを評価の対象とした。先行研究の問題点として、提示する実験者の操作が「何を意図して行ったか」について子どもが均一の理解を示しているかどうかが統制されていないという点か指摘されるため、本研究では、課題ごとで操作が異なるが、同一の形状をしたスピーカーから音が鳴るという行為の結果を同一にし、実験者が「音を鳴らす」という意図を持っていることをより明確な形で子どもに示した。その結果、発達遅滞幼児が失敗試行を模倣しないのに対して、自閉症幼児群の子どもは実験者の操作の成功失敗に関わらず、行為をすべて模倣する傾向がみられた。このため、自閉症幼児が発達遅滞幼児とは質的に異なる意図理解を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に予定していた観察ならびに実験が行えたこと、そしてデータの分析も順調に進んでいることによる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の2年目にあたる今年度(平成24年度)は、自閉症幼児の意図理解についての実験研究を中心課題とする。具体的には、自閉症幼児群と発達遅滞幼児群の実験参加者数を増やすこと、さらに統制群として新たに定型発達幼児を追加することで、自閉症幼児群にみられる意図理解における障害特性を明らかにする。 さらに、療育実践の観察データの更なる分析を行い、学術論文として刊行する。また観察を引き続き実施し、とりわけ自閉症幼児を含む集団の活動の縦断的変化についての検討から、保育者と他の子どもとのそれぞれの相互交渉での行動特徴を、意図理解と絡めて分析を行う。
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