2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナス科植物におけるジャガイモ疫病菌に対する抵抗性因子の網羅的解析
Project/Area Number |
11J02734
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柴田 裕介 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ジャガイモ疫病菌 / ファイトアレキシン / ベンサミアナタバコ / トランスポーター |
Research Abstract |
本年度は、主に、1)ジャガイモ疫病菌抵抗性遺伝子の単離 2)ジャガイモ疫病菌抵抗性に必須なPDR型ABCトランスポーター(PDR1)の機能解析 3)PDR1を介して細胞外へ輸送される抗菌性化合物に関する研究を行い、一定の成果があった。 1)ベンサミアナタバコの防御応答時に誘導される遺伝子をランダムにサイレンシングした株の作出を行い、ジャガイモ疫病菌抵抗性の低下する株の選抜を昨年度に引き続き行った。現在までに約2000株のスクリーニングを終え、63株の疫病菌抵抗性低下株を単離し、26種の遺伝子の同定を完了した。単離される遺伝子の重複も一部の遺伝子を除きほぼないことから、今後も本系を用いて新規な遺伝子が単離できると考えられた。 2)スクリーニングから単離されたPDR1は細胞膜に局在することが知ちれている基質特異性の低い輸送因子であり、これまでに複数の植物でその輸送基質について示唆的な報告がなされているが、未だ詳細な機能は明らかにされていない。本研究の結果PDR1が様々な抗菌物質の細胞外輸送に関与し、複数の病原体に対する広範な抵抗性に必須であることを示唆した。 3)スクリーニングから単離されたメバロン酸二リン酸脱炭酸酵素(MPD)及びファルネシルニリン酸合成酵素(FPPS)遺伝子はメバロン酸経路構成酵素の遺伝子であり、下流のセスキテルペンであるファイトアレキシン合成を制御していると想定した。しかし、両遺伝子の解析の結果、メバロン酸経路においてMVDとFPPSの間から分岐するジテルペノイド合成経路が、疫病菌の葉組織への侵入を防ぐ上で非常に重要であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度中に解析する新規疫病菌抵抗性遺伝子としてPDR1遺伝子を選定し、その機能を解析していく中で、本トランスポーターが抵抗性に重要な複数の抗菌物質を輸送していることを見いだし、さらに輸送基質を同定する上での示唆的な結果が得られた。このことから、PDR1の疫病菌抵抗性における機能の全容が明らかとなりつつあり、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
トランスポーター遺伝子が実際に複数のファイトアレキシンの輸送に関わっていることを証明するために、ファイトアレキシンに対して感受性の共生糸状菌(Epichloe festucae)にトランスポーター遺伝子を導入し、ファイトアレキシン耐性の変化を観察する予定である。また、病原菌への抵抗性誘導時のトランスポーター遺伝子の発現誘導および細胞内局在性をとらえるため、緑色蛍光タンパク質を連結させたトランスポーター遺伝子をベンサミアナタバコに導入し、顕微鏡観察を行う予定である。
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