2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J02742
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 克彦 京都大学, 法学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ニーズ / デイヴィッド・ウィギンズ / ジョナサン・ダンシー / 道徳的個別主義 |
Research Abstract |
今年度は哲学者のデイヴィッド・ウィギンズが論じるニーズという概念を巡る議論を検討し、その考察の成果を学術論文という形で公刊した。この論文では、前半部分でウィギンズのニーズ概念の分析および定式化をとりあげ、ニーズの概念が必然性という様相概念と密接な関係があること、およびニーズの定式化の内部に変動するパラメーターを含むことを明らかにした。また、論文の後半部分では正義、平等、権利などの規範的概念との関係を検討し、ニーズの概念がそれらの概念と密接でありながらも、場合によっては対立しあう関係であることを論じ、ニーズの概念が他の規範的概念には還元できない還元不可能な概念であることを主張した。この研究テーマの概要は既に昨年度の学会および研究会において報告を行っており、本来であるならば、昨年度の時点でこの研究テーマで論文を公刊する予定であったのだが、当初の推測以上に他領域に影響する深い問題であったという点などから執筆が遅れてしまった。今年度の最低限の目標として、この研究テーマの論文公刊を目指していたため、昨年度の懸案が今年度でようやく解消されたことになる。 また、上記の作業と並行して、当初の研究計画で検討を行う予定だったジョナサン・ダンシーという哲学者の「道徳的個別主義」と呼ばれる立場と実践的推論と法的思考との関連性、またウィギンズの議論を検討した結果、派生するいくつかの論点)について考察を進めた。これらの問題は論文公刊や口頭報告という形で発表をまだ行っていないため、できるだけ早い時期にこれらの成果をまとめることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の最低限の目標として、ウィギンズの「ニーズ」の議論を学術論文という形でまとめ、その論文の公刊を行う計画を立てていた。また研究が順調に進めば、上述のダンシーの議論やウィギンズの議論から派生した論点を考察し、研究会での口頭報告や論文の公刊を目指す予定であった。結果として前者の目標は達成したものの、後者の目標は未達成である点が反省点である
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究計画でとりあげる予定であったDancyの議論も現在継続して研究を行っており、ウィギンズの議論で得られた知見を今後の研究に生かすことを試みたい。次年度ではダンシーの議論をばウィギンズの議論から派生した論点(ウィギンズのヒューム解釈について、法と言語の問題など)の考察を行い、論文の公刊を目指す。初年度の成果も踏まえると、研究のアウトプットの公表が全体的にスローペースであるため、次年度では積極的にアウトプットの公表を進めたい。
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Research Products
(2 results)