2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J02759
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩渕 俊樹 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 脳機能イメージング / 言語 / 文理解 / 機能的核磁気共鳴画像法 / fMRI |
Research Abstract |
今年度は脳内の背外側前頭前野と呼ばれる脳領域が言語理解において果たす役割に関して研究を進めた.この領域はワーキングメモリにおける注意のコントロールに関与しているといわれている.実施した研究内容は大きく以下の2つに分けられる.これらの問題について機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて研究を行い,国内学会および国際学会にて口頭発表を行った. 1.文理解における主語の役割に関する研究 主語は文における統語的な機能のひとつであるが,これには注意という非言語的な認知メカニズムと大きく関わっている可能性が近年の言語学研究によって指摘されている.このような背景に基づき,日本語の文を理解してその意味をワーキングメモリに保持された視覚的情景にマッピングさせる課題を実施した.この実験により,課題遂行時に情景中のどの対象に注意が向けられるかは提示文の主語によって決定されることが分かった.さらに,このような注意のコントロールにより右背外側前頭前野という領域が賦活されることがfMRI計測により明らかにされた.本年度はこの成果について国際学会にて口頭発表を行い,査読付きプロシーディングスに論文を発表した. 2.複文理解における階層構造の処理に関する研究 階層的な構造をうまく処理することはヒト以外の動物にはかなり困難であることが知られており,言語のようなヒト固有の能力について中心的な役割を果たすのではないかと考えられている.しかしながら階層的構造の処理を行うための詳細な認知的メカニズムにほとんど不明であった.本研究はこのような処理において,ワーキングメモリにおける注意の制御機構溺重要な役割を示すことを実験的に検証した.具体的には階層的な中央埋め込み構造を持つ複文(例.「AはBにしかられたCをけとばした」)の読解課題を被験者に行ってもらい,理解中の脳活動をfMRIによって計測した.その結果,文中の主節,従属節といった階層を適切に切り替えるためには,左背外側前頭前野という領域が重要であることが分かった.本研究の成果については国内学会で発表を行い,学会誌に論文を発表した.本研究についてはさらに学会発表の内容に基づいた論文を執筆中であり,近日中に国際学術誌へ投稿する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はMRI装置の撮像パラメータについて事前に入手していた情報に誤りがあることが秋頃に発覚し,当初得られていた結果を全面的に再解析する必要に迫られた.そのため論文執筆や新規実験の開始などにやや遅れが生じている.しかし複文理解の神経基盤に関する研究については,先述の再分析もほぼ完了しており年度末には国内学会での発表も行っている.そのため当初の計画に比べて若干遅れてはいるものの,ある程度の進展はあったといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の内容について,今年度実施した複文理解の神経基盤に関する研究をさらに推進する.階層的な埋め込み構造を持つ文の理解について,脳内でどのようなネットワークが関与しているかを詳細に検討し,原著論文を執筆する.また,ヒトは言語だけでなく,非言語的に相手の意図を読み取る場合にも階層的な関係性の理解を行うことがある.今後はこうした他者の心的推定における階層的関係の処理に関しても研究を進めていく.具体的には「心の理論」課題に関するfMRI実験を行い,言語的および非言語的コミュニケーションにおける階層的処理の相同性・個別性について検討する.
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Research Products
(5 results)