2011 Fiscal Year Annual Research Report
カブトムシ幼虫の集合性に関するメカニズムと適応的意義の解明
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11J02778
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小島 渉 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 信号 / 幼虫 / 蛹 / 振動 / 集合性 / 昆虫 / 進化生態学 |
Research Abstract |
カブトムシ幼虫が、化学物質を介して地中で集合することを明らかにした。また、カブトムシ亜科の他種やハナムグリ亜科の多くの種の幼虫も集合をつくることを発見した。地中で生活する昆虫において、集合性はこれまで報告されてこなかったが、少なくとも、腐植食性のコガネムシ科の幼虫に普遍的にみられる性質である可能性が高い。さらに、なぜカブトムシなどの幼虫が集合をつくるのかについて、「集団で餌である腐葉土を食べることで、餌の質を改善している」という仮説をたて、低密度と高密度で飼育したときにおける幼虫の適応度を比較することで検証した。しかし、二つの処理区において、幼虫の成長率などに差は見られず、上の仮説を支持するような結果は得られなかった。カブトムシの幼虫が集合する適応的意義については、今後、別の角度から検証する必要があるだろう。 幼虫の集合性だけでなく、幼虫と蛹のあいだに振動を介した相互作用があることも発見した。蛹は、近付いてきた幼虫に対して振動信号を送ることで、みずからの蛹室が壊されることを防いでいた。また、蛹は、振動を忌避するという、幼虫の捕食者対抗戦略を利用することで、振動信号を進化させてきたことが、近縁種間の比較から明らかとなった。これは、発信者が受信者をだますことで、信号を進化させてきたことを示す数少ない研究例である。この成果は、動物の信号や、利他行動、協力行動などの相互作用がどのように進化してきたかを考えるうえで、非常に重要となるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
想定したよりも早い段階で、実験系を確立することに成功したため、多くのデータをとることができた。また、複数の国際誌への掲載、図書の執筆や、国際学会におけるポスター賞の受賞など、多くの成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
腐植食性のコガネムシ科だけでなく、植物食性のコガネムシ科(スジコガネ亜科やコフキコガネ亜科)の幼虫についても、集合性の有無を調査する。また、カブトムシの幼虫が集合する適応的意義についてさらに詳細に調べるために、低密度と高密度で野外において飼育したときにおける幼虫の適応度を比較する予定である。さらに、現在までに検討してこなかった、天敵からの希釈効果などの仮説についても検証したい。
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Research Products
(6 results)