2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J02829
|
Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
松永 伸司 東京芸術大学, 大学院・美術研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ビデオゲーム / 美学 / フィクション / ゲームシステム / 空間 / 時間 |
Research Abstract |
本年度は、ビデオゲーム作品(プレイヤーがプレイする対象)について、とくにその意味作用の側面の特有性を中心に研究した。ビデオゲーム作品は、従来の再現芸術と同じく虚構世界上の存在者や出来事を再現するが、それと同時に、伝統的ゲームと同じくゲームシステム上の存在者や出来事をも表す。このことを、より特殊な議論に焦点をあわせながら、以下の三つの口頭発表で論じた。 日本記号学会大会では、ビデオゲームが持つ虚構的な意味作用とゲームシステム的な意味作用をその指示対象によってそれぞれ定義したうえで、両者が持ちうる多様な関係を論じた。そこで、シミュレーション、謎解きといったゲーム要素や、ビデオゲーム作品の評価的言説においてしばしば取り上げられる意味上の一貫性/非一貫性を、両者の関係として説明した。 美学会全国大会では、ビデオゲームにおける空間の再現について、先行の空間分類論の批判と再定式化をしながら、理論的概念枠を提示した。そこではまず、再現するものとしての画面と再現されるものとしての空間が区別される。また、再現される空間については、意味作用一般と同様に虚構世界上の空間とゲームシステム上の空間がやはり明確に区別される。さらに、空間再現のしかたとしての遠近法という概念が導入される。この概念枠によって、ビデオゲームにおける空間再現の議論は概念的に明確にされる。 日本デジタルゲーム学会大会では、ビデオゲームにおける時間の問題を論じた。ここでもやはり、現実上の時間と、意味されるものとしての虚構世界上の時間およびゲームシステム上の時間が区別される。この発表では、この三つの時間層を明確に区別したうえで、それらの層の多様な関係として、ビデオゲームの時間に関連するさまざまな日常的な記述概念(ターン制/リアルタイム制、ゲームスピード、セーブ/ロード等々)を説明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビデオゲームにおいて生じる二種類の意味作用の定式化について、おおむね予定通りの研究および成果発表を行えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度までの研究で、ビデオゲーム作品の同一性の問題(作品の存在論)およびビデオゲームを芸術形式と言えるかどうかという問題(芸術の定義)の解決が必要であることが認識された。今年度前半は、これらの論点の研究を進める。また、今年度後半は、これまでの研究では触れられていなかったビデオゲームにおけるインタラクションの問題の研究を、前年度の研究成果を前提にしつつ進める。
|
Research Products
(3 results)