2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J02864
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
白川 俊之 同志社大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 階級・階層 / 社会的不平等 / 教育 / 合理的選択 / トラッキング / 社会変動 |
Research Abstract |
本課題の目的は教育機会の階層格差の生成と変化のメカニズムについて、理論的・経験的な研究をおこなうことである。 研究全体のうち平成23年度には主として2つのサブテーマに取り組むことを計画していた。その第一が、高校生の学力と出身階層のデータを用いて、高校卒業後の予想学歴がどのように決定されるのかを明らかにすることであった。この研究ではとくに性別と出身階層、性別と在籍学校タイプとの相互作用(回帰式における交差項)に注目して、進路形成メカニズムにおける男女間の類似点と相違点を浮き彫りにすることをねらいとしていた。分析の結果、出身階層による進路の差異化については男女でほぼ同様の力学が働いているが、在籍学校タイプの効果は予定している進学先と複雑に結びつきながら、男女で異なる効果をもつことが示された。後者について、女性は男性以上に高卒後の選択肢が多様なことが、在籍学校タイプの複雑な効果を生み出している可能性を指摘した。 第二のサブテーマは、教育機会の階層差が長期的にどのような変化をたどっているのかを明らかにすることであった。この課題に取り組むに際して、教育機会を中学卒業後の進路(時点T1)と高校卒業後の進路(時点T2)とに分けて分析するアプローチを採用した。これらのうちT1については、先行研究でも指摘されているように、上位階層の進学率が飽和することで上下階層間の進学率の格差が縮小するという傾向を見出すことができた。本研究ではT1で発生する進学先の質的差異を検討対象とし考慮に入れている点が先行研究と異なる。T2については格差が拡大もしくは縮小へと向かう単調な傾向は検出できなかった。第二のサブテーマに関連することとして先行研究の解読をとおして、今後、経験的な研究に渡すべき論点の再整理をおこなうことができた。こうした文献調査という点において、本年度は非常に大きな収穫があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね計画通りに目的の達成に向かって進んでいる。研究遂行の過程で新たに見出された課題とデータ・方法上の要修正点とを当初計画に取りこむことで、研究がもつインプリケーションをより高めることにも成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には研究計画に沿って研究をすすめていけば、課題の達成は果たされていると予想している。最終的な成果としては、一時点における教育機会不平等の発生を議論する部分よりも、その時間的な変化により多くの議論を費やす構成をとる論文(博士論文)が仕上がると予想している。博士論文の各章を構成する個別論点のうちとくに重要性が高いと考えられるものについては、学術誌と紀要を利用して単一の論文としても同時に発表することができれば、さらに理想的である。
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