2011 Fiscal Year Annual Research Report
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11J02867
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
別府 史章 北海道大学, 大学院・水産科学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フコキサンチン / SCD-1 / レプチン感受性 / SR-B1 / LDLレセプター |
Research Abstract |
本研究では、強い抗肥満効果を有するフコキサンチン(以下Fx)による生体全体の脂質代謝への影響を明らかにすることを目的とし、脂質代謝に関わる組織、さらには組織間の相互作用について実験動物を用いた検討を行った。 Fx摂取により内臓脂肪重量の低減効果が認められた糖尿病/肥満モデルKK-Ayマウスの肝臓、筋肉および白色脂肪組織における脂質代謝関連遺伝子およびタンパク質の発現変化を調べた結果、肝臓における脂肪酸不飽和化酵素SCD-1の発現抑制作用を見出した。SCD-1は脂肪酸代謝だけでなく、生体内のエネルギー代謝調節において重要な役割を果たすレプチンのターゲット因子であることが知られている。肥満病態では中枢神経系からのレプチンによる代謝促進作用のシグナルが破綻しているため、肥満予防においてはレプチンの感受性の亢進が重要となる。つまり、本研究で明らかとなったSCD-1の発現抑制作用は、肥満により引き起こされるレプチン抵抗性の改善を示しており、Fxによる抗肥満効果の作用機構解明に貢献する重要な知見である。 一方、腸管でのコレステロール吸収抑制作用を有する植物ステロールをFxと併用投与した結果、Fxによる血中コレステロール上昇作用に影響がないことを明らかにした。さらに、コレステロール代謝の中心的な役割を担う肝臓においてLDL受容体およびSR-B1タンパク質の有意な発現低下が認められた。これにより、Fxによる血中コレステロール上昇作用が受容体を介した肝臓への取り込み低下に起因することを解明した。以上の結果は、脂質を生体全体へ運搬するリポタンパク質の代謝にもフコキサンチンが関与していることを示唆する重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の年次計画では、(1)肝臓や他組織におけるコレステロール代謝への影響、(2)コレステロール代謝に影響をおよぼす他の食品素材との併用効果、(3)生体内各組織における脂質、特に脂肪酸代謝への影響を明らかにすることを一年目の目標とした。今回得られた成果は、本研究で目的とするフコキサンチンのコレステロール代謝および抗肥満作用に関わる脂質代謝への影響を明らかにする上で、重要な知見である。よって、これまでの進捗から計画は着実に実行されていると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた結果より、フコキサンチンのコレステロール代謝への影響にリポタンパク質による脂質運搬機構が関わっていることが推察された。また、抗肥満効果については肝臓におけるSCD1発現抑制作用が関与することが示され、生体内エネルギー代謝を制御するレプチンシグナルへの影響が考えられる。したがって、本年度はこれらの脂質代謝制御機構について、実験動物を用いた試験を中心に研究を推進する。特に、リポタンパク質代謝への影響は、リポタンパク質プロファイル解析を行い、各リポタンパク質画分へのコレステロール局在とフコキサンチンの影響を明らかにする。また、レプチンシグナルへの影響についてはレプチン欠損ob/obマウスを用いた試験を行い、SCDI発現抑制作用へのフコキサンチンとレプチンの相互作用について検討する。
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