2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J02900
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
黒澤 忠法 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 高分子メモリ / 揮発・不揮発性 / 励起状態の安定化 / 空間配位 / 大きな共鳴構造 / ペリレンビスイミド |
Research Abstract |
高分子メモリ材料は、現行の無機半導体メモリに取って代わる材料として大きな注目を集めている。これまでに様々なポリマーがメモリ特性を示すと報告されてきているものの、その一次構造と発現するメモリ特性の関係は未だほとんど解明されておらず、この関係性は高分子メモリ材料の研究開発が抱える最も大きな課題である。即ち、メモリ特性を調節できるようなポリマーの分子設計指針を構築することが、本研究領域において非常に重要な位置を占める。本研究では、発現されるメモリ特性の中で最も重要な「揮発・不揮発性の調節」を分子設計によって達成することを目的としている。揮発・不揮発性の調節を行うためには、ポリマーに電圧を印加させたときに誘起される励起状態(電荷移動錯体)の安定性を調節することが必要である。一般的に、電子供与性のドナーと電子受容性のアクセプターがポリマー鎖中に存在すると容易に励起状態は誘起されるものの、電場を取り除くとこの励起状態は不安定であるために元の基底状態に戻ってしまう。そこで、本年度の研究では1)空間配位、2)大きな共鳴構造という二つの設計指針に基づいて励起状態の安定化を目指し、メモリの揮発・不揮発性の調節を試みた。具体的には、1)では側鎖にトリフェニルアミンを導入し、意図的に捻じれた空間配位を取るポリマーの設計・合成およびメモリ特性評価を行った。2)では大きな共鳴構造を有するペリレンビスイミド骨格を組み込んだポリマーの設計・合成およびメモリ特性評価を行った。結果として、1)からはポリマーに大きな空間配位を取らせることは励起状態の安定化には寄与しない、2)からは大きな共鳴構造の導入は励起状態の安定化に非常に効果的であるという知見を得た。取り分け、2)の結果からはペリレンビスイミド骨格の導入量を変化させることによって不揮発性メモリの発現のみならず、揮発性から不揮発性への調節を容易に行えるという知見を得ることに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに二つの分子設計指針に基づいてポリマーの一次構造と発現するメモリ特性の関係の解明を試みた。二つのうち一つの指針に基づいて合成されたポリマーは、期待通りのメモリ特性を発現することがわかった。 これにより、分子設計によるメモリ特性の調節が可能であることが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
交付申請書における研究目的および実施計画は全部で3つの指針(空間配位・大きな共鳴構造・強い電荷移動)に基づいて行うというものである。これまでに前半の2つから有用な知見を得ているため、今後の研究推進方策は残る一つの指針(強い電荷移動)に基づく研究の実施である。研究を遂行する上での問題点としては、前半の二つの指針に基づくポリマーの合成は容易であったのに対して、残る一つの指針に基づくポリマーの合成は経路が多段階かつ煩雑であると予想される。この対策として、比較的シンプルな分子設計および高収率および精製が簡便な反応の選択を慎重に行う必要がある。
|