2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J02900
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
黒澤 忠法 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高分子メモリ / 揮発・不揮発の調節 / 電荷移動錯体の安定化 / 捻じれ / 共役長 / 電子親和力 / ラジカルアニオン / ラジカルカチオン |
Research Abstract |
高分子メモリ材料は、現行の無機半導体メモリに取って代わる材料として大きな注目を集めている。これまでに様々なポリマーがメモリ特性を示すと報告されてきているものの、その一次構造と発現するメモリ特性の関係は未だほとんど解明されておらず、この関係性は高分子メモリ材料の研究開発が抱える最も大きな課題である。即ち、メモリ特性を調節できるようなポリマーの分子設計指針を構築することが、本研究領域において非常に重要な位置を占める。本研究では、発現されるメモリ特性の中で最も重要な「揮発・不揮発性の調節」を分子設計によって達成することを目的としている。揮発・不揮発性の調節を行うためには、ポリマーに電圧を印加させたときに誘起される励起状態(電荷移動錯体;CT complex)の安定性を調節することが必要である。 一般的に、電子供与性のドナーと電子受容性のアクセプターがポリマー鎖中に存在すると、電圧を印加した際に容易にCT complexは形成されるものの、電場を取り除くとこのCT complexは不安定であるために元の基底状態に戻ってしまう。そこで、本年度の研究では1)空間配位、2)長い共役長という二つの設計指針に基づいて励起状態の安定化を目指し、メモリの揮発・不揮発性の調節を試みた。具体的には、1)では側鎖にドナーユニットを導入し、意図的に捻じれた空間配位を取るポリマーの設計・合成およびメモリ特性評価を行った。2)では、長い共役長(および高い電子親和力)を有する部位を組み込んだポリマーの設計・合成およびメモリ特性評価を行った。結果として、1)からはポリマー全体の空間配位ではなく、ドナーとアクセプター間の二面角の増加がCT complexの安定化に寄与すること、2)からはCT complexを形成するラジカルアニオンとラジカルカチオンを共役長や電子親和力という要素で安定化させることが、不揮発性メモリ特性の発現に強く寄与するという知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに二つの分子設計指針に基づいてポリマーの一次構造と発現するメモリ特性の関係の解明を試みた。この関係性の解明によって、これまで最も困難とされてきた分子設計を通して発現するメモリ特性の調節を可能とする非常に単純で汎用性のある設計方針を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書における研究目的および実施計画は全部で3つの指針(空間配位・大きな共鳴構造・強い電荷移動)に基づいて行うというものである。これまでに前半の2つから有用な知見を得ているため、今後の研究推進方策は残る一つの指針(強い電荷移動)に基づく研究の実施である。研究を遂行する上での問題点としては、前半の二つの指針に基づくポリマーの合成は容易であったのに対して、残る一つの指針に基づくポリマーの合成は経路が多段階かつ煩雑であると予想される。この対策として、比較的シンプルな分子設計および高収率および精製が簡便な反応の選択を慎重に行う必要がある。
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