2011 Fiscal Year Annual Research Report
古DNA、形態情報を用いた先史時代琉球列島への家畜ブタ導入経路の解明
Project/Area Number |
11J03060
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
高橋 遼平 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ancient DNA / 家畜ブタ / リュウキュウイノシシ / mtDNA / D-loop / 動物考古学 / 琉球列島 / 先史時代 |
Research Abstract |
本研究では先史時代の琉球列島へ「いつ、どこに、どこから」イノシシもしくは家畜ブタ(以下イノシシ属と省略)が導入されていたのか解明するため、琉球列島や周辺地域の遺跡から出土したイノシシ属骨のancientDNA(以下古DNAと省略)・形態解析を行う。本年度は石垣島 大田原遺跡と神田貝塚、宮古島長墓遺跡といった琉球列島南部圏の遺跡資料を採取し、これまでに得た宮古島アラフ遺跡資料と共に解析した。この結果、琉球列島に生息する野生のリュウキュウイノシシ(Sus scrofo riukiuanus)とは遺伝的に別系統と考えられる個体がアラフ遺跡と長墓遺跡で複数確認された。 また遺跡資料の比較に有用であるリュウキュウイノシシに関するフィールド調査を実施し、奄美大島(78個体)、沖縄本島(404個体)、徳之島(30個体)の資料を採取した。さらに国立科学博物館所蔵のリュウキュウイノシシ資料(全6島、224個体)、フィリピンのイノシシ属資料(13個体)、海南島イノシシ属資料(22個体)についてもサンプリングを行い、これらの一部を解析した。全7島の生息地のうち6島のリュウキュウイノシシを解析した結果これらは全て遺伝的に近縁であり、リュウキュウイノシシは単一の母集団に由来する野生イノシシ系統であると推察された。 上述した現生・遺跡資料の解析結果から、琉球列島南部圏ではアラフ遺跡や長墓遺跡が利用されていた約2000年前に、野生のリュウキュウイノシシとは別系統のイノシシ属が外部から導入されていた可能性が推察された。研究成果は「第65回日本人類学会大会」等で発表し、日本人類学会からは「若手会員大会発表賞」を受賞した。また沖縄本島の野国貝塚群から出土したイノシシ属骨資料を中心とした古DNA・形態解析の結果をまとめた論文を学術雑誌「Anthropological Science」誌にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではリュウキュウイノシシの起源や遺伝的変異幅について初年度に論文投稿を行う予定であったが、生息地の1つである請島のイノシシ猟の結果が悪く、サンプリングが行えなかった。しかし琉球列島の遺跡資料については順調に解析が進んでいるほか、海外の現生資料に関しても国立科学博物館所蔵のイノシシ属骨資料からDNAサンプリングを完了している。これまでに行った沖縄本島野国貝塚群の資料に関する解析結果をまとめた投稿論文も受理され、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
請島の現生リュウキュウイノシシについてDNAサンプリングを行う必要がある。これに関しては毎年のイノシシ猟のみでなく、猟師が過去に狩猟して保存している骨資料も対象としたフィールド調査が必要である。初年度のフィールド調査を通じて得られた協力関係を最大限に活かし、DNAサンプリングを成功させる。今後は現生リュウキュウイノシシの起源や遺伝的変異幅に関する研究成果を論文にまとめ「Journal of Molecular Evolution」誌に投稿する。 また琉球列島南部圏の遺跡資料の解析結果は国際学術誌「International Journal of Evolutionary Biology」誌に投稿準備中であり、これを進めると共に今後は海外の遺跡・現生資料についても解析を行う。
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