2011 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙大規模構造の形成現場における銀河の星形成活動の探査
Project/Area Number |
11J03067
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
小山 佑世 国立天文台, 光赤外研究部, 特別研究員PD
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Keywords | 天文学 / 銀河 / 銀河団 / すばる望遠鏡 |
Research Abstract |
本年度は、主にすばる望遠鏡の狭帯域フィルターを用いた赤方偏移2.16の原始銀河団PKS1138-262領域のHα輝線銀河探査を進めた。このPKS1138-262原始銀河団領域は、現在からおよそ105億年も過去の宇宙の銀河の集積現場である。我々は、すばる望遠鏡の近赤外線カメラMOIRCSの狭帯域フィルターNB2071(中心波長2.068ミクロン)を用いた観測を行い、このPKS1138-262原始銀河団の周辺に10メガパーセク以上にわたって広がる大規模構造の存在を示すことに成功した。そして、このPKS1138-262原始銀河団領域には、「赤い色」をもつ星形成銀河が多数存在することも分かった。我々の解析によると、赤い星形成銀河は、一般の青い星形成銀河に比べて大きな星質量をもち、なかには10^<11>太陽質量を超える大きな星質量をもつものも存在していた。これは現在の宇宙の銀河団に見られる非常に重い銀河に匹敵するほどの質量であり、銀河団の銀河は100億年以上も昔の時点ですでに大部分の星を作り終えていたことが観測的に示されたことになる。我々は同領域についてスピッツアー宇宙望遠鏡の中間赤外線(24ミクロン帯)のデータも解析し、赤い星形成銀河の多くが赤外線で明るいスターバースト銀河であることも明らかにした。すなわち、100億年以上過去の宇宙の銀河集積の現場では、ダストを伴う激しい星形成活動が一般のフィールドより多く引き起こされ、それが銀河団環境における銀河の進化を促進したのではないかと考えられる。このPKS1138-262原始銀河団内に多数見つかった大質量星形成銀河は、現在の宇宙の銀河団銀河の直接の祖先であると考えられ、次年度以降重点的に追観測を行う必要がありそうだ。なお、上記研究結果については現在論文を執筆中であり、第2年度の早期には査読付論文誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の前半に上記PKS1138-262領域の良質なデータが獲得できたことで、原始銀河団領域において初めて大質量の赤い星形成銀河を発見するなど予想を超える成果が得られた。また当初の計画どおり、本年度の後半からは英国のダーラム大学に長期滞在して研究を行っている。ダーラム大学の研究グループとの連携で、遠方銀河団の銀河を「面分光」する観測提案を準備するなど、新しい視点も加わって充実した初年度であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で見つかった原始銀河団領域の星形成銀河をさまざまな方面からフォローアップしていくことが求められる。特に、引き続き英国の研究グループと協力し、銀河を空間的に分解する「面分光」の探査を進める必要がある。遠方宇宙の銀河団領域の銀河を面分光する観測は、サンプルの構築の難しさなどによってこれまで行われた例がない。われわれの独自のサンプルを生かし、世界で初めて遠方銀河団中の銀河を「解剖」する研究を進めていきたい。
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Research Products
(7 results)