2011 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類の初期発生過程におけるヒストン変異体H2A. Zの機能解析
Project/Area Number |
11J03091
|
Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
高木 恵次 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | エピジェネティクス / ヒストン変異体 / H2A.Z / ES細胞 / 分子生物学 |
Research Abstract |
本研究は、進化的保存性が高く、多種多様な機能を有するヒストン変異体H2A.Zの、哺乳動物初期発生過程における役割を明らかにすることを目的としている。 脊椎動物において、H2A.Zには遺伝子座の異なる2つのアイソフォームH2A.Z-1とZ-2の存在が報告されている。H2A.Z-1遺伝子欠損マウスは、胎生初期で死亡する事が既に報告されており、発生に必須のヒストン変異体であることが示唆されるが、H2A.Z-2に関する知見は少ない。私は、H2A.Z-1およびZ-2の条件的欠損マウスを作製、解析し、H2A.Z-2は、哺乳動物の発生において大きな役割を担っておらず、H2A.Z-1のみがその役割を担っている事を明らかにした。続いて私は、H2A.Z-1のマウス胚発生における役割を解析するために、H2A.Z-1条件的欠損マウス胚からES細胞、および胎仔線維芽細胞を作製し、解析を行った。その結果、H2A.Z-1欠損ES細胞は、その形態や細胞分裂に大きな異常を示さなかったのに対して、Z-1欠損胎仔線維芽細胞は染色体分配異常を引き起こして分裂を停止する事が分かった。この事は、未分化細胞の分化前後において、H2A.Z-1が何らかの役割を持っている可能性を示唆している。未分化な細胞が分化する際に、遺伝子の発現パターンは大きく変化するが、その変化を規定しているエピジェネティックなメカニズムに関しては未だに未解明な部分も多く存在している。これらのメカニズムが解明されれば、分化細胞のiPS化をより効率的に行えるようになる他、それらiPS細胞の分化に方向性を持たせる事で、ある特定の細胞、組織のみを再生できるようになり、生物学的、医学的に大きな意義がある。当研究成果は、H2A.Z-1が、細胞分化過程でのクロマチン構造の変化に関わっている可能性を示唆するものであり、重要な知見である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私はH2A.Z-1およびZ-2条件的欠損マウスを作製、解析し、H2A.Z-1のみがマウス発生に重要であることを突き止めた。またH2A.Z-1条件的欠損ES細胞や胎仔線維芽細胞を用いた解析により、H2A.Z-1が細胞分化前後でその機能を変化させる事を見いだした。
|
Strategy for Future Research Activity |
私は今後、H2A.Z-1欠損ES細胞と胎仔線維芽細胞を用いて、遺伝子発現解析を行い、またクロマチン構成タンパク質の局在の変化を免疫染色で観察することにより、これら2つの細胞において、H2A.Z-1の機能がどのように異なるのかを解析したい。また、H2A.Z-1欠損ES細胞を用いて分化誘導実験を行い、細胞分化マーカーの解析や、免疫染色により、H2A.Z-1の細胞分化における役割について解析を行いたい。
|