2011 Fiscal Year Annual Research Report
複製開始因子を活性化する新規DNA配列の増殖相、細胞周期と協調した制御機構
Project/Area Number |
11J03114
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
加生 和寿 九州大学, 大学院・薬学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 大腸菌 / 染色体複製 / DnaA / DARS / ヌクレオチド交換 / 細胞周期 / 核様体凝集蛋白質 / AAA+ファミリー |
Research Abstract |
染色体DNAの複製開始反応は細胞周期中1回しか起こらないよう厳密に制御されている。大腸菌の複製開始因子であるDnaA蛋白質はATP/ADPと高い親和性を持ち、ATP型が活性型、ADP型が不活性型である。ATP型DnaAレベルは複製開始時のみ一過的に上昇する。近年、当研究室は、DARS2(DnaA-reactivating sequence 2)という特異的DNA配列が、ヌクレオチド交換反応によりDnaAを活性化することを明らかにした。 報告者は実験計画に従って、精製した核様体蛋白質を用いた試験管内DARS2促進系を新たに再構成した。フットプリント法により、DARS2内の核様体蛋白質結合領域を決定した。各結合領域の変異体解析により、核様体蛋白質が細胞内、試験管内の両方でDARS2促進に必須であることを明らかにした。重要な事に、核様体蛋白質によるDARS2促進反応にはDNA全体構造が必要であった。 核様体蛋白質の発現量や染色体DNA構造は、増殖相や栄養条件に応じて変化することから、DARS2によるDnaA活性化経路は増殖環境と協調した制御である可能性が示唆される。DARS2内の核様体蛋白質結合領域は、大腸菌近縁種で保存されており、共通の複製開始促進機構を有する事が予想される。報告者は、これらの成果を国内学会(日本遺伝学会第83回大会Best Papers賞受賞)、国際学会において発表した。 さらに、報告者はDnaA集合配列として知られている特異的DNA配列が、DnaAを不活性化する事を明らかにした。このDnaA不活性化反応も、核様体蛋白質の結合に依存していた。報告者は、この解析について、現在論文執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した年次計画(1年目)について、解析は概ね終了し現在論文執筆中である。さらに、細胞周期解析についても検討段階であり、計画以上に進展していると言える。また、新規DnaA不活性化経路を発見し、適時的な複製開始制御機構の解明に大きく貢献した。
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Strategy for Future Research Activity |
年次計画に記載した核様体蛋白質Dpsについて、欠失株を調製し解析したところDARS2の活性に影響を与えなかった。増殖相での制御について、今後はDNA全体構造に重点を置いて解析する予定である。 ChIP(クロマチン免疫沈降)解析について、現状ではDARS2依存的なシグナルは非特異的DNAの2倍程度であり、細胞周期解析は困難である。今後は、DARS2多コピー化や免疫沈降のビーズを検討する等して、シグナルを増強させる予定である。
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